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わたしの生活水準向上計画。(仮)  作者: 椿
第1章 下級貴族
6/9

お母様とお茶会

その後、初めてとなる両親との夜ご飯をとった。

ただ、お父様は、お仕事が長引いたようで一緒に食事をする時間が減ったとめそめそしてお母様に無視されていた。


なんか…………、哀れなお父様だった。うん。


ちなみにここの料理は、あんまり美味しくない。日本と比べると、そりゃあ、ねえ。不味いわけでもなく、とても美味しいわけでもなく、って感じだった。




そして次の日からわたしの地獄が始まった。


「おはようございます、マリアナ様」


起こしてくれたのは、メイドさん。わあ、貴族みたい!って一瞬思ったわたしが馬鹿だった。


「………今何時ですか?」


明らかにまだ夜だと思うんだけど。カーテンが開けられているはずなのに部屋の中の明かりはカーテンを開けてくれたメイドさんと私を起こしてくれたメイトさんが持つランプみたいなものだけ。


「何時、…………でございますか?今は一の鐘と二の鐘の丁度真ん中頃でございますよ。奥様が支度をするよう言われております故、お手伝いにまいりました」


そう言えば、この世界では、1日に8回、等間隔に鳴らされる鐘の音を基準に生活していると教えてもらったんだ。

つまり、3時間に1度鐘が鳴るってことじゃん。


でも絶対に、1時間毎に鐘を鳴らしたら時間がわかりやすいと思う。

っていうのは思っていても言わないよ?


ということはつまり……………、今って4時半だよね、うん。


早すぎじゃない!?


その後わたしは着替えさせてもらい、お母様の部屋へと向かった。


その間、転んだ回数、6回。


だって、裾の長い服を着て、慣れない小さな体で階段登ったり降りたり、廊下を歩き回ったりしたんだよ!?そりゃあ転ぶでしょう!

それより、何この長ったらしい服!邪魔何ですけどー?


結局最後の方は歩き疲れて、服の裾をズリズリと引き摺りながらお母様の部屋に到着。


はあはあ、はあはあ。


「まあ、リアナ。淑女としてそんな声を上げてはなりませんわ」

「おはようございます、お母様。リアナ、ですか?」

「ええ。ルイと貴女の愛称にしました。あまり変わっていないけれど、愛称を呼ぶだけで繋がりを感じるでしょう?マリアナのままでも可愛いのですけれど、リアナと呼びますわ」


リアナ……….、ね。


「可愛いと思います!」

「そうでしょう!?」


嬉しそうに胸をはるお母様と、このお屋敷のどこかにいらっしゃるお父様に感謝です!

マリアナという名前も2人が付けてくれたそうだし。


「ところで、朝早くから何を始めるのですか………?」

「これからは毎日この時間に起きてもらいます。貴女は覚えなければならないことで溢れているのですから、努力を惜しまず頑張ってくださいませ。」


毎日4時半に起きるの!?


「こんな小さな体で睡眠時間を削ると成長しなくなるじゃないですか!」

「就寝を早めればいいでしょう」


そうなるのね、やっぱり。


「さあ、まずはこの世界のルールについてです。何故そんなに裾の長い服を着させられたのか分かりますか?」


いやいや、意味が無いんならこんな服着ないから!


「この世界では、貴族は裾の長い服を着なければなりません。貴族の周りには、侍女や側近という人たちが常に居て、その人たちを頼って生活をするため、自分で服を着たりお茶の用意をしたりはしません。周りに世話を焼いてくれる人がいるから袖が長くても邪魔にならない、つまり袖が長いことは位の高さを表します。平民が袖の長い服を着ても、邪魔で仕方が無いでしょう?」


貴族でも邪魔じゃないんですかね?


「裾が長いのは、それだけ良質な布を多く手に入れられることが一目瞭然に分かるため、これも位の高さを表します。つまり、より布を使っている服を着ることで位の高さを表すことができます。しかし、慣れないとこの裾の長い服を着て上手く立ち回ることが出来ないので、これから猛特訓です。あとは言葉遣いだったり、食事のマナー、この世界と国の歴史、神々のお名前、ダンス、奉納舞というダンスとは異なる神々に捧げるための舞、お茶会でのマナー、楽器の演奏や歌などの、これもまた神々に捧げるためのものなどが、取り敢えず早急に覚えなければならないことかしらね。後はおいおい覚えていけば良いでしょう」


多っ!


「一つ質問いいですか?」

「ええ、いいわよ」

「わたしの服、裾は床をずるほど長いし、袖もかなり長いとわたしは思うんですけど、これが標準なんですか?」


だって、着物の袖程に長いんだよ!?

こんなのが普通だったら、慣れるのが絶対に大変だと思うの。


「それは、上位領地の領主や王族なみですね」

「アルヴェンティー家は、中位領地の下級貴族ですよね………?」

「そうね。アルヴェンティーは、レストアーレンで上位3位に入る程の豊かな地方なのよ。領主一族が住む城があるレスとアーレンの街とあるヴェンティーは離れていて、ここは小さくてのどかな地方ですけれど、農産物の生産量は領地内でも上位を保ち、冬も雪が積もる回数もそこまで多くなく、命の女神フローレンス様の御力を宿すと語り継がれる神木があるこの地方は、ほかの街と比べて魔力で満たされている。好条件が揃っている上に、ルイの、この地方に住む人々からの信頼も厚く、住民も優しい、良い人たちばかり。わたくしも何度も助けていただいたわ。この街はわたくしたちの誇りなの。この街は、さっきも言ったけれどとても豊かで、ほかの街と比べて治安もよく、財政も潤っている。そしてそのぶんほかの貴族からの恨みや嫉妬も受けやすい。だから、リアナも保身の為に、より高度な教養を身に付けてもらいます」


何故、アルヴェンティー家は下級貴族なのか。何故下級貴族なのに地方を治めているのか。それに、“事情があって子供を産むことが出来ない”立場だと、お母様はさらっと言っていた。


絶対何かが関係しているはずだ。


「まあ、わたくしについてくることができれば、完璧な淑女になれるわ!」

「この服は?こんなに良い布を使って刺繍がされた高価な服、汚してしまったらと思うと今すぐ脱ぎたいんですけど」

「早いうちに教養を身につけてもらいたいから、リアナがそのドレスを汚さないように努力をすれば良いのよ?お淑やかに動くことが出来ればドレスが汚れることはありません。その、優雅に動こうとする集中力を引き出すためのドレスです。頑張りなさいな」


笑顔でしれっとそういったお母様。

本当に汚してしまったり破ってしまったりしたらどうするの!


そして、その「教えがいがあるわねえ」と楽しそうに、でもどう見ても、口角を上げて何かを企んでそうな“ニヤリ”という笑い方は恐ろしいのでやめていただきたい。


「さあ、お勉強の時間ですわ。まずは言葉遣いが最初ですね。基本中の基本ですもの。まず、自分をわたし、というのはだめです。必ずわたくし、と言うこと。〜ですわ、など、女性らしさを入れること。有難うございます、ではなくてありがとう存じます、と言うこと。他にも気になったことはおいおい指摘していきますから、気をつけて発言なさい。このままお茶会でのマナーを教えながら、言葉遣いのレッスンも同時進行していきましょう。お茶の準備をして頂戴」


すると、音もなくテーブルの上にティーカップやらお菓子の乗ったお皿が並べられる。


侍女さんたちによるお茶の準備が終わったのを確認すると、お母様は奥の席に腰を下ろした。


すわったらまずいよね………?こういうのって、進められてから座るべきでしょう………?多分。


迷いながらもお母様に席を勧められるまで待つ。


「どうぞお座りになって、リアナ」

「ありがとう存じます」


よいしょ、っと椅子に登るように座った。高い!椅子が高すぎる!


あ、わたしの身長が低いのか。


「席を勧められるのをまつまではよかったけれど、椅子の座り方は最悪ね。〜が出来ない、〜したくない、とかは他人に聞かれたり悟られたりしてはいけないことよ。自分の侍女や側近と上手く意思疎通をして、身長をカバーしなさい。あと、焦り、不安、緊張、その他自分の感情を周りに読まれないようにしなさい。ダダ漏れよ。どんな時でも優雅に、可憐に、美しく立ち回りなさい」


その後、椅子に座るまでを4回ほどやり直した。


「こうしてお茶を共にすることが出来て光栄ですわ。楽しんでくださいませ」

「こちらこそお招き頂きありがとう存じます」

「今日はマルデニアラント産のお茶をご用意致しましたの。気に入ってくださると嬉しいわ」

「ありがとう存じます」


どこ産って言った?

正直なんでもいい………。


そんなことを思いながら、カップと手に取って、くぴっと一口飲む。


わお!美味しいじゃん!


「はい、一旦止まりなさい。今、気にも止めずお茶を飲みましたけど、カップに毒が入れられていたらどうするのです?毒入りのお茶なんて日常茶飯事です。ちゃんと確認なさい」

「毒入りのお茶なんてあるんですか………」


常識が違いすぎる!

物騒すぎでしょ!


「お茶やお菓子は、主催者がまずは口に含むのが決まりです。もし何かあれば、自分の侍女や側近に毒味させなさい。間違っても自分が勝手に食べるようなことはしてはなりません」


「でも、お茶に毒が混じっているのではなくてカップに塗られていた場合はどうしよもないてすよね?あと、お茶に入れるお砂糖とかみたいな、ティーカップとは別にポットが用意されているものがあったとしたら、どうするのですか?」

「その為の銀食器です。銀は毒に触れると変色しますから、銀食器を使うのがルールです。また、別のポットがある場合は、それも主催者がまず最初に安全を示すように口に含むのです。逆に、主催者が口に含まなかったものは食べてはなりません。毒が入っていふ危険性があるものには手を伸ばしてはなりません」


めんどくさいんですね………。


「リアナはどんなものに興味がありますの?」

「そうですね、歴史やダンスなどは楽しみにしていますよ。体を動かすことは嫌いではないですし、新しい知識を取り入れることなんか大好きです!知らないことを経験し、知識を得ることはとても楽しいことだと思うのです」

「逆に、マナーレッスンとかは苦手ですの?」

「嫌いではないですけれど、似ているものを時と場所によって使い分けられるように細々といろんなことを覚えることは苦手ですわ。記憶力は飛び抜けていい訳では無いですし。お母様はマナーレッスンを面倒だと感じたことはありませんの?」

「教養は、自分を守ることにつながるから、覚えなければならないと必死でしたわ」


エトセトラ。たわいもないお話が続いた。ただ、言葉遣いに気をつけながら会話をするのはとっっってもきつい。


「言葉遣いは宜しいでしょう。自然に話せるようになるようにすることが出来れば文句無しですね。元がしっかりしているって良いですわ。1から子供にマナーを教えるのはとても大変ですからね。あと、話題の振り方も意識するといいわ。卒無く、ぼろを見せず、お茶会を終わらせるのです。主催者に必要なマナーは後々教えます。まあ、初めての練習にしては上出来でしょう。次は歴史ですね。世界史と国史、どっちが宜しくて?」

「世界史のほうは、少しはフロレンティアーナ様から教えていただきましたからそちらでお願い致します」


まだ二の鐘のなる前に、世界史の授業が始まった。この頃、空が明るくなり始めていた。

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