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桃太郎寓話伝  作者: ノラギツネ
鈴音のお宿編
8/8

7ノ巻 趣味は竹細工

「カグヤ様っ!如何かこの竹筒をお譲り頂けませんでしょうか?」


「えっと、ど、どうぞ……。」


「有り難う御座いますっ!早速、加工せねばっ!!」


そう言うと、鈴之助は嵐の様に去って行った。


「な、何だったんだ?」


残ったのは鈴音ただ一人……。


「……父さまが失礼を致しました。あっ、此方お茶の葉です、お納めください。」


鈴音は小さく頭を下げて謝罪しながら別の容器へと入れられたお茶っ葉を差し出す。


「父さまは趣味で竹細工をして居まして、最近では素材の竹選びから拘る始末……、如何やらカグヤさまのお持ちに成られたあの黄金色に輝く竹が父さまの琴線に触れたのでしょう。」


こんな事に成るなら見せなければ良かったと、後悔する鈴音にカグヤは宿屋に止めてくれるお礼だと言って、気にしない様に伝えるのであった。



「さて、腹も落ち着いて来た事だし、これから如何しようか?寝るにはまだ早いよな?」


流石に桃太郎もカグヤも高級な旅籠屋になど泊まった事は無いので暇の潰し方が解らないでいた。


「宜しければ旅籠屋の中をご案内しましょうか?色々と見て回れる場所も有りますよ?」


「桃兄さま、行って観ましょう。」


どうせ部屋に居てもする事も無いので、鈴音の申し出を受け案内をして貰う事にしたのだった。

立派な庭園の中庭やお茶を楽しめる談話室等を案内された後やって来たのは土産物売り場だった。


「此方、当旅籠屋の土産物売り場と成っております。」


「へぇ、色々な物が有るんだな。どれどれ……。」


土産物売り場と銘打っているものの、実際はちょっとした商店並の規模が有り、これを土産物売り場と称してしまう辺り、やはり立派な旅籠は違うのだなと、桃太郎は思うのだった。


「わぁ……、色々有りますね。あっ、桃兄さま?旅の道中で食べられそうな乾物も売っていますよ。少し買って行きましょうか?」


「そうだな、お爺さんお婆さんの元から殆ど手ぶらに近い状態で出て来たからな……。少し買い揃えておこうか。」


「はい、それじゃあ私が色々と見立てて来ますね。」


「ああ、頼むよカグヤ。」


そう言ってカグヤは瞳を輝かせると、水を得た魚の如く買い物に勤しみ始めた。

手に取り、品に取り、ああでも無い、こうでも無いと財布の中身と相談しながら物色している。


……まだかな?

…………長いな。

………………何を選んでいるんだカグヤは?

……………………もう、部屋に帰ってて良いかな?

女の買い物って何でこんなに時間が掛かるんだろうか?

待ってる身にも成って貰いたい物だ。愚痴愚痴……。


「桃兄さまっ!お待たせしました。待ちました?」


「いや、全然待って無いさっ。」


しれっと内心の愚痴が零れない様に笑顔で返す桃太郎であった。

思いも掛けずに買い物にかなり時間が掛かってしまったので部屋に戻って今日はもう寝ようと言う事に成った。

桃太郎とカグヤは床に就くと山道を歩いた疲れからかすぐに寝息を立てて眠ってしまった。

そして翌朝……。


「お世話に成りました。」


朝食を済ませた桃太郎とカグヤは出立の前に鈴音と鈴之助親子にお世話に成った挨拶をしていた。


「桃太郎さま、カグヤさま、その節は本当に有難う御座いました。」


「娘の命をお助け戴いた御恩に対し満足行く御持て成しをする事も出来ませんで……。つきましては此方をお持ち頂きたく。」


そう言って鈴之助が持って来たのは……。


「『葛籠』(つづら)ですか?」


鈴之助は桃太郎達の前に葛籠を二つ持って来た。


「大きな葛籠に小さな葛籠……。」


「実は昨夜、カグヤ様に頂いた竹を加工して作成いたしました所、少々変わった品が出来上がって御座いまして……。こうして荷を入れますと……」


鈴之助が『大きな葛籠』を手に取ると次々と荷物を収納して行く。

不思議な物で葛籠の大きさ以上の荷物が収納されて行く。


「と、まあ、ご覧の様に多くの荷物が収納出来る様なのです。私が昨晩の内に試しました所……その、収納に底が見えませんでした。」


「へぇ、それは凄い。一杯収納出来て便利ですね。」


「どうぞ、お持ち下さいませ。」


桃太郎とカグヤは如何しようかと相談した末、『小さな葛籠』だけを戴いて行く事にした。

鈴之助は『大きな葛籠』も持って行って下さいと言っていたが、元々は旅籠のお礼にとカグヤが渡した光る竹筒が原材料に成っているので、大きな葛籠まで貰う訳には行かなかったので其処は頑なに遠慮させて貰ったのだった。

ならば、せめてものお礼にと鈴之助は食料や調味料、それに衣類等を沢山『小さな葛籠』に詰め込んでくれた。


「「では、お世話に成りました。」」


「桃太郎様、カグヤ様、道中お気を付けて。」


「桃太郎さま、かぐやさま、又いらして下さいね。」


何時までも手を振る鈴音に見送られ二人は旅籠屋を後にするのだった。



桃太郎とカグヤが旅籠屋を旅立ってから数刻……。

旅籠屋の前に老婆が一人佇んでいた。


「臭う……、臭うぞぃ……。鳥臭い匂いに交じって姉様の血の香りが……。此処に姉様を殺した憎き仇が居るに違い無い。……一人一人探していては埒が明かぬっ、いっそ皆殺しにしてくれるわぁ!イヒャヒャヒャヒャッ!!」


鈴音の旅籠屋の題材は……皆さんご存知『舌切り雀』です。


「手違い盗賊ライフ~職業間違えました~」

「Dead・Monster!」も連載中です。

良かったら読んで見て下さい。

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