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桃太郎寓話伝  作者: ノラギツネ
鈴音のお宿編
7/8

6ノ巻 温泉と御馳走

「あ~~っ、気持ち良い。」


桃太郎は一旦案内された部屋へと荷物を置くと宿の人に勧められた温泉へと入っている。


「あっ、その声は桃兄さまですか?」


「んっ?その声はカグヤか?」


風呂の中央に高々とそびえ立つ竹製の柵の向こう側からカグヤの声が聞こえて来た。

如何やらこの向うは女湯であった様だ。


「桃兄さま~?温泉って気持ちが良いんですね~?私、温泉なんて初めてですよ~?」


「ああっ、俺も初めて入ったが良い物だな。肩まで浸かれるお湯と言うのが此処まで気持ち良いとは思わなかった。」


「本当ですね。それにとっても広いですしね。泳げそうですよね?」


「泳ぐなよ?女の子がはしたないぞ?それに、他の人にも迷惑だろうしな。」


「今なら大丈夫ですよ?私以外は女湯に人影なんて有りませんし……。」


「そうか、男湯も俺以外は誰も居ない。貸切状態と言うやつだな。……いやいや、それでも泳ぐなよ。」


「ふふっ、冗談ですよ桃兄さま。それにしてもこんな大きなお風呂を私達だけで使うのは少し寂しいですね……。」


「そう……だな。」


「桃兄さま、カグヤがお背中流しに行きましょうか?」


「だから、女の子がはしたないって。」


「ふふふっ、冗談ですよ。」


カグヤと柵越しに喋っているとついつい時間を忘れて長風呂してしまい、二人とも露天風呂から上がる頃にはすっかりのぼせてしまったとさ……。


「露天風呂に初めて入るお客様は長時間の入浴をしてしまって、よくのぼせ上ってしまうお客様が多いんですよ?」


そう言って団扇を仰いで介抱くれるのは鈴音である。


「さあ、冷たいお水をどうぞ、桃太郎さま、カグヤさま。」


竹筒に入った冷水をそれぞれ受け取ると喉を鳴らして一気に飲み干す。


「っ!キンキンッに冷えてるっ!!」


火照った体に冷水が染み入るのが分かる。


「ほぅ。」


カグヤも冷水を飲み干し一息ついた様だ。


「落ち着きましたか?」


「ああ、有難う。助かったよ。」


「いえいえ、宿ではよくある事なので……。それよりも、お部屋の方でお食事の準備が整っていますから、ご案内しますね。」


鈴音の案内で部屋まで戻って来た。

部屋に入って桃太郎とカグヤは用意された食事を前に言葉を失ってしまった。


「す、すごい御馳走ですね。」


「これは凄いな。」


「鈴音ちゃん?これ、本当に私と桃兄さまが食べて良いの?間違って無い?」


「はいっ!大丈夫です!父さまにお願いして一杯作って貰いました。……まあ、父さまも元々これ位は用意する心算だったそうですけど。」


「と、とは言え俺とカグヤ、二人で食べるにしちゃ多すぎるよ。良かったら鈴音も一緒に食べて行かないか?」


「えっ?でも、これはお二人に用意した物ですし……。」


「いえ、桃兄さまの言う通り。鈴音ちゃんも一緒に食べましょう。皆で一緒に食べた方が美味しいですし、私も鈴音ちゃんと一緒にご飯が食べたいですしね。」


「うーんっ……、お客様にお出しした物だから本当は手を付けちゃ駄目なのですけど……」


鈴音は少し悩んだ後……。


「……私も御一緒したいです。」


鈴音の一言に桃太郎とカグヤは内心ホッと一息吐く。


「(とてもじゃないけどこんなに食べきれないからなぁ。)」


「(かと言って、残すのも心苦しいですしねぇ。)」


2人して同じような事を悩んでいた桃太郎とカグヤであった。



「「……御馳走様でした。」」


「お粗末さまでした。お茶を入れますね。」


何とか三人で出された食事を平らげる事が出来た。

鈴音が食後のお茶を入れてくれたので有難く湯呑を受け取る。


「ズズッ……、ああっ、食後のお茶も旨い。」


「本当に美味しいですね。茶葉が違うのかしら?」


「気に入って貰えて嬉しいです。宜しければカグヤさま、茶葉をお分けしましょうか?」


「良いの、鈴音ちゃん?それならば是非お願いしたいです。」


「ちょっと待ってて下さい。仲居さんに頼んで貰って来ますね。」


「ああっ、ちょっと待って下さい。入れ物が要りますよね。何か丁度良い入れ物が有ったかな?」


そう言ってカグヤは自身の荷物を探る。


「あっ、これなんて入れ物に良さそうです。」


そう言って取り出したのは黄金色に輝く竹筒であった。


「カグヤ、それって……。」


桃太郎もカグヤも自身の生まれについてはお爺さんとお婆さんから聞かされているので、カグヤが取り出した竹筒に桃太郎が気が付いた。


「はい……、でも良いんです。光っている他は特別な所の無い只の竹筒ですし。」


そう言ってカグヤは竹筒を鈴音に差し出す。

しかし、鈴音は差し出された竹筒を興味深そうに確認すると……。


「カグヤさま?この竹筒、父さまにお見せしても良いですか?」


「っ?……どうぞ?」


そうして鈴音が竹筒を持って部屋を出て行ってから然程間を置かずに父親の鈴之助と共に戻って来た。


温泉行きたいです。

スーパー銭湯でもいいです。

いっそ、温泉の素でも……。



『手違い盗賊ライフ~職業間違えました~』

『DeadMonster!』

上記の二本も連載中です。何処かで見たら応援してやって下さいな。

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