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桃太郎寓話伝  作者: ノラギツネ
鈴音のお宿編
6/8

5ノ巻 鈴音のお宿

よし、回れ右して帰ろう。

桃太郎とカグヤは息ピッタリに回れ右して立ち去ろうとした時に、旅籠屋の番台の奥から出て来た番頭らしき人に声を掛けられる。


「ようこそ御出で下さいました。ささっ、どうぞ此方へ。」


何時の間にか回れ右した二人の前面へと躍り出ると丁寧に頭を下げて二人を歓迎する。

駄目だ、回り込まれてしまった。……逃げられない。

もう、如何にでもな~れっ。

桃太郎とカグヤは逃げられないと悟ると心の中で思った。


「「(一番安い部屋にして貰おう……。)」」


2人とも生まれも育ちも山中の一軒家育ち……。

偶に麓の町に下りる事は有っても所詮は田舎町。

桃太郎もカグヤも、流石にこんなに立派な旅籠屋を見たのは初めてであった。

つまり……、悲しい程に小市民なのであった。


足濯ぎに用意してくれたタライからは微かに湯気が立ち上っていた。

流石、一流の宿は入り口からも御持て成しが違う物なのだと早速、面食らってしまう。

恐る恐る湯の張られたタライに足を浸ける。


「うっ、ああぁぁぁ~。」


温かなお湯が心地いい。

山道を歩き通して強張った足から疲労がじんわりと溶けて行く様だ。


「はぅ~……。疲れた足が解れます。」


カグヤもお湯の温かさに蕩けそうな表情を浮かべている。

足濯ぎを丁度終えた二人の元へと、先に旅籠屋へと入っていた鈴音がやって来た。

鈴音の後ろにもう一人、男性が一緒に居た。


「此方の御二人です、父さま。」


鈴音がそう言うと、男性が深々と桃太郎とカグヤに対して頭を下げる。


「この度は娘の命をお助け戴き、誠に有難う御座いますっ。鈴音の父で、鈴之助と申します。この旅籠の主人でございます。以後、お見知りおきを……。」


「ど、どうも……、桃太郎です。」


「……妹のカグヤです。」


旅籠屋の主人に簡単ではあるが、自己紹介を含めて会釈を返す。


「おっと、こんな所で立ち話も何ですな。気が付きませんで……。これ、誰か。お二人をお部屋までご案内してっ。」


鈴之助の言葉に何処からともなく仲居さんが現れる。


「ささっ、お部屋までご案内致します、どうぞ此方へ~っ。」


「あ、いやっ、そのっ……。」


「如何かされましたか?」


入り口でたたらを踏む桃太郎とカグヤの二人に鈴ノ助が何か粗相でも有ったのかと、心配そうに此方を見る。


「その……、実は路銀が心許なくて……、ですね?とてもじゃ無いですけど、此処の旅籠代が出せそうに無いので……、お暇しようかと思うのですが……。」


暫しの沈黙。

鈴音と鈴之助は桃太郎の言葉に面食らい、互いに見つめ合う。

沈黙を破ったのは鈴音と鈴之助の笑い声であった。


「ふふっ、ふふふふふっ。桃太郎さまったら、可笑しな事を仰るのですね。……お父さまっ?」


「ハハハッ!ああ、皆までいう事は無い、勿論分かっているよ、鈴音。」


鈴之助は桃太郎に向き直る。


「桃太郎様、カグヤ様。娘の命の恩人からお金など頂いたり等とそんな無粋は致しません。どうか気兼ね無く、自分の家だと思って寛いで下さい。」


「桃太郎さま、カグヤさまっ、鈴音にはこんな事しかして差し上げられません。如何か僅かばかりの恩返しをさせて下さい。」


そう言って鈴音は桃太郎とカグヤに頭を下げる。

流石に恩返しの為にも泊って行ってくれと懇願する鈴音に対して否と言えない二人は鈴音の父『鈴之助』に促されるまま宿屋へと上がらせて貰うのであった。



一方その頃、月が雲に隠れ、闇に閉ざされた森の中……。


「おっ!?おおっ!?おおっ!!おおおぉぉぉ……」


一人の老婆が暗闇の中で嗚咽を漏らしていた。


「おおっ、お姉さまッ……、何と御労しいお姿に成られて……。」


老婆はソッと地面から何かを拾い上げると愛おしそうに胸元に抱き寄せた。


「帰りが遅いので心配して見に来てみれば……。ウウッ……。痛かったでしょう、苦しかったでしょう、悔しかったでしょう、妬ましいでしょう、恨めしいでしょう……」


老婆が抱きしめていた物、それはつい先程桃太郎によって切り飛ばされた山姥の首であった。


「許さぬ……。許さぬぞぉ!お姉さまの首を切り落とした狼藉者を草の根分けてでも探し出して、仇を討ってくれるわっ!!イヒャヒャヒャッ!!」


僅かに顔を覗かせた月の明かりに照らされた老婆の顔は鬼の形相であったと言う……。


婆率高しっ!!

ドウナッテンダコノ作品ハ!?


熱いッス。

ジメジメしてるッス。

そろそろクーラーを入れるべきか、入れざるべきか……、それが問題だ!!

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