お稽古します。3
おばあちゃんがお稽古を終えるのを待つ間、順番を待っているおばさま達に少々かまってもらう。
「野々花ちゃんどんどん上手になっていくわねぇ。はい、おやつどうぞ。」
「ありがとう、おばちゃん!おまんじゅう大好き~。」
「やっぱり女の子は違うわ~。うちの孫息子なんてこんなにしっかりして無いもの~。」
「あら、女の子だってダメな子はダメよ?うちの子なんていっつもぽや~としてて…。なに聞いても「何でもいい」って張り合い無いったら…。」
「気が強いよりいいじゃない。うちなんか兄妹喧嘩がすごくって…。」
どのご家庭も不満はあるよね。うん。おまんじゅうをお茶で流し込みながらおばさま達の会話に耳を傾ける。おばあちゃんは…もう1回振りをさらう様だ。もう1杯お茶飲もうかな。ポットの近くにいるお弟子さんの所に向かう。
「あのね、のんちゃんお茶淹れていい?おばあちゃんにおしえてもらったから一人でできるのよ!」
あ、うっかりどや顔してまった…。
「うふふっ。じゃあ見ててあげるわね?」
その前に、と一度使った茶葉をあけ急須をかるくゆすいでくれる。
「野々花ちゃん、おばあちゃんもう少しで終わりそうだから、おばあちゃんと先生にも淹れてあげたら?きっと喜ぶわ。」
ではそうしましょう。
「のんちゃんと~おばあちゃんでふたりでいっこ。せんせいでいっこ…」
茶葉の杯数は人数マイナス1。つまり3人で茶さじ2つ。
「お茶わんに~のんちゃん、おばあちゃん、せんせい…」
お湯を3つの湯呑に入れて量をはかってから、急須にそそぐ。あっちっ。
「お茶さん、お茶さん。おいしくな~れ。おいしくなったら出てきておくれ」
おいしい呪文を2回となえます。ここからが大変。こぼさない様に慎重に…。
「半分こでおばあちゃん、のんちゃん、せんせい。もっかい半分こで…。」
色見が偏らないよう3つ均一にお茶をまわし淹れる。よし、やりきった!
「できたの~。」
む、どうやらいつの間にかおばさまの注目を集めていたらしい。微笑ましいという顔をされた。ちょっと恥ずかしい。
おばあちゃんが先生に終わりの挨拶をするのをまって、お弟子さんが先生にお茶を持って行ってくれる。
「先生~、お疲れ様です。野々花ちゃんがお茶を淹れてくれましたよ。見ててとっても上手に淹れてましたよ。」
「すごいわね~、野々花ちゃん。いただきます。」
自分でも飲んでみる。魔法の呪文でちゃんと甘みも出てる。自画自賛レベルだ。
「あのね、朝ごはんのあとにね、のんちゃんいっつもいれてるの!ママがかず君におっぱいあげないといけないでしょ?だからおばあちゃんに教えてもらったの。」
おばあちゃんも教えた甲斐があったのかニコニコしてる。
「のんちゃん、いっつもママのお手伝いいっぱいしてるのよね。」
「うん!」
「「ほんと、すごいわね~」」
おばさま達にちやほやされて、お稽古場からご機嫌でおうちに帰ります。
ほんとはママに甘えたいけど、赤ちゃんの一志がいるから中々甘えられません。代わりにおばさま達が可愛がってくれます。お褒めの言葉に社交辞令もあるけどそのへんは子供なんで素直にどや顔します。