7/30
慣れないコーヒー
カナが憂うつそうな顔をしている。
「どうかした?」
「うん…」
カナが黙っている。
ユリと街を歩いていた。
今日の街は、なんだか騒々しい。
「静かなとこ、入らない?」
あまり入らないようなカフェに入った。
「コーヒー、苦ーい」
ユリが笑いながら言った。
「ねえ、喫茶室でも行かない?」
僕はカナに言った。
「いいよ」
ゆっくりした時間が流れる。
「少し、気分、よくなった。ありがとう」
カナが笑顔で言った。
ユリが、ぼんやりと、外を流れていく人を眺めている。
「私も、あの中の、ただの独りなのよね」
「ナンバーワン、目指す?」
ユリがケタケタ笑った。
「別に。楽しくて充実してればいいもんね」
「うん」
僕らは慣れないコーヒーに戻った。