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「お電話ではクリーニングの安岡さんとか言ってられましたが…。ちょうど、うちの局の面白番組があったんですが、安岡さん、そこへ一般投稿されたんですよ」
そんなことはどうでもいいんだ! と里山は少し怒れた。ただ、安岡が出入りしている近所のクリーニング屋だということは里山も頷けた。しかし、その安岡がどのようにして自分と小次郎の秘密を知ったというのだ? と、そんな疑問が里山に湧いていた。考えられるのは安岡がお得意先回りで寄ったとき以外には考えられない。ほとんどの場合、配達で安岡が訪れたとき、里山は会社にいたからだ。
「そうですか…。つまらん投稿をしてくれたもんだ。いや、まったく心当たりがないんですよ、本当に。何か聞き違えたんじゃないですかね?」
「ということは、安岡さんがクリーニングでここへ寄られているというのは事実なんですね?」
いつの間にか、後ろに立っていた沙希代は奥へと消えていた。里山一人が取り残された形だ。
「はい、それは…。ち、ちょっと開けて下さい。また夜にでも…。遅刻しますので…」
里山は上手く逃げを打った。報道陣は外へ押し出される格好で仕方なく前を開け、里山を通した。里山は威厳を正し、咳払いをひとつした。そして、ゆったりと玄関戸を閉めると報道陣に軽くお辞儀をし、足早に家から去った。主役が消え去れば、いても仕方がない。報道陣は、ザワつきながら少しずつ里山の家から撤収し始めた。