表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/50

-3-

 安岡の目に映ったのは、いつも見かける里山と猫が玄関戸の外にいる姿で、他に人の気配はなかった。妙だ…確か、人の声がした、と安岡は首をひねった。そのとき、また声がした。里山の声である。この声は里山さんだ…と安岡は得心して思った。里山が話し終えると、また先ほどの別の声がした。聞き覚えがない声である。安岡は耳をそばだてた。すると、どうも里山に話しているようである。安岡は里山と猫の姿を凝視ぎょうしした。そして、安岡は驚愕きょうがくの事実を知らされた。

━ 猫が …猫が人の言葉を話している。しかも…日本語だ! ━

 安岡はこわくなり、気づかれないように物音をたてず後退あとずさりすると、自転車を静かに動かして里山家を去った。今朝は配達ではなくご用聞きだったのが安岡としては助かった。安岡が垣間見ていた事実を里山も小次郎もまったく知らなかった。

 ことがマスコミ沙汰ざたになったのは、その二週間後だった。

「だいぶ、暖かくなった。今年も、そろそろ玄関だな…。じゃあ、行ってくるよ」

 里山はキッチンの片隅に横たわる小次郎の頭をナデナデしながら、そう小さく言った。そして、いつものように玄関で靴をき、沙希代にかばんを渡されたときだった。玄関の外に異様な人だかりと騒ぐ声が聞こえた。里山は何事だ? と思った。鞄を渡し、キッチンへもどろうとしていた沙希代もその異様さに戻るのをやめ、玄関戸を注視した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ