表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/50

-2-

━ なんだ、クリーニング屋のノロ安か… ━

 小次郎は、うざったい気分でけた薄目をまた閉じた。小次郎の心中では、店員安岡は、のろまのノロ安だった。いつも配達が遅れ、現れるのは得てして誰もいないときだったから、勝手にそう渾名あだなをつけたのだ。ドラが現れなくなって随分、小次郎の生活は安定していた。それが、である。今来た安岡からとんでもない大ごとが広がろうとは…。このときの小次郎は知るよしもなく、長閑のどか欠伸あくびをひとつ打って、ついでに毛並みをナメナメとでつけた。

 春の桜も去り、小次郎は退屈な日々をこともなげに送っていた。それでも、毎日の里山家をひと回りする日課は続けていた。そんなある日の朝、どういう訳か、いつも玄関外では話さない里山が小次郎に声をかけた。

「どうだ小次郎。この辺りの春は自然が豊かでいいだろうが…」

『そうですね。確かに野趣やしゅ、豊かです…』

 小次郎はついうっかり、辺りを見回さず人間語で話してしまった。いつもは人の気配がないか確認してからでないと人間語では話さなかったのだ。それが、事の始まりとなった。丁度そのとき、クリーニング屋のノロ安が里山の家へさしかかったときで、家前に自転車を止め、入ろうとしていた。安岡は、おやっ? といぶかしく思った。というのも、里山の家には里山と沙希代の二人しかいないことを知っていたからだ。 安岡は、音をたてないよう、玄関をうかがった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ