表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

俺は殺さねー!

 私は森に着きました。確かにリンゴのモンスターがいます。

とりあえず、木を切り武器を作る事にしました。

手頃な木に登り、ちょうどいい枝を切り落としました。

私は地べたに座り込み、握り易いように木の皮を剥ぎ取り、

黙々と木の武器作りの作業をしていました。


 武器は完成しました。ちょっと曲がってますが、だいたい

真っ直ぐです。長さは私の身長と同じくらいですから、170

センチくらいでしょうか。先を尖らしたので、木の槍です。

私は、昼食を食べる事にしました。

アップリン達は、何か言ってます。

パンをかじりながら、耳を澄まして聞いてみる事にしました。


 アップリン達の会話。


「あそこに人間がいるよ。また仲間が殺されるよ。」

「それは仕方ないんだよ、他のモンスターで悪い奴がいるから

僕達も殺されるんだよ。」

「そうか、仕方ないのか、でも僕達、悪さしないよね。」

「そうだよね、僕達、悪さしないよね。」


 アップリン達は、ワイワイガヤガヤ言っています。


「僕達も悪くないけど、人間達も悪くないよ。」

「そうなの?ふーん、そうなんだ。」

「嫌な事、考えないで、歌でも歌おうよ。」

「うん、そうだね。」

「パンパンパンパッ♪ 鬼のパンツ~♪」

「パンパンパンパッ♪ 豚のパンツ~♪」

「なに、その歌?おかしいね。」

「ギャハハ。おかしいね。」

「僕達は、葉っぱと水で生きていける~♪」

「そうだね。葉っぱと水で生きていけるね。」

「今日は、暖かくて気持ちいいね。」

「うん、気持ちいいね♪」


 昼食も終わり、私は考えていた。

私は困っている。金もない。食料もない。

街が近くなので、ケントも一食分しかくれなかった。

アップリンを倒せば、金になる。食料も買える。

しかし、あいつらは悪い奴か?

ふぅーと、ため息をつき、空を見上げた。

樹木の枝葉の隙間から日光が差し込んでいる。

気持ちのいい風も吹いている。

樹木の隙間から、紙キレがひらひらと落ちてきた。

私は掴み捕った。天使の手紙だ。


 竜二さんへ

 迷う事は、ありません。

 あなたは正義の味方なんです。

 正義の名の下に、罪のないモンスターを殺してください。

 抵抗しない、アップリン達を殺してください。

 イリーナ大陸の人々は、あなたの力が必要なんです。

 魔法の呪文は、お金を出せば、教えてくれる人がいます。

 今、竜二さんに必要なのは、ゴールドです。

 罪のないアップリンを殺して、お金を貯めてください。

 そして、その汚れた手で、その汚れた心で、悪い奴らを

 を倒してください。

 みんなが、そうしてます。誰もあたなを責めません。

 偽善者は必要ないんです。今、必要なのは力です。

 では、頑張ってね~♪


 何が偽善者だ、何が汚れた手だ、何が汚れた心だ。

俺は、こいつらを殺さない、絶対殺さない。

偽善者でいい、少なくとも俺は、こいつらが好きだ。

こんな俺でも偽善者がどういうものか知っている。

ただ、人を助けると気持ちいいからだ、困ってる人を助けると

気持ちいいからだ。

中には金を出す奴もいる。それも見返りがあるからだ。

良い事をすると、みんなに褒められるからだ。

結局は自分に利益があるから善行をするのだ。


 俺は18歳になるまで、悪事ばかりしていた。

人を殺した事はないけど、喧嘩もした、仲間達と夜のデパート

に忍び込み、商品を盗んだりもした。暴走族にも入っていた。

あの時の俺は自分のルールに従い生きていた。

大人になって社会のルールに従うようになったけど、嫌な事ば

かりだった。ここでは自分のルールでやってやる。

なにが正義だ。正義のバカヤロー!正義のバカヤロー!

俺は、心の中で正義のバカヤロー!と繰り返し言い続けた。

気づくと、ぽろぽろ、ぽろぽろ、涙を流していた。

「おい、人間!なにを泣いている?」

声のほうを見ると、一匹のアップリンが俺の前にいた。


アップリン「俺の名前は、クレイジー・ジョニー!夜空を見る

      度、思い出せ!」

 

 傷だらけの一匹のアップリンが、俺にそう言い放った。


 ジョニー「おい、人間!俺がお前の相手をしてやる。だから

      仲間を殺すな!俺はアップリンの中で唯一の戦士

      だ!。だが、安心しろ。俺は反撃しない。俺の体

      は鉄より硬いぞ!さー、かかってこい。」

   竜二「俺は、戦わない。」

 ジョニー「戦わない?そんな筈はない。ここに来る人間は仲

      間を殺す、さー、かかってこい!」

   竜二「俺は、お前と戦わない。」

 ジョニー「おい、人間!なにを泣いている?悲しいのか?」

   竜二「俺の名前は、竜二だ。別に悲しい訳じゃない。」

 ジョニー「おい、人間!お前は良い奴なのか?」

   竜二「俺の名前は、竜二だ。悪い奴だ。」

 ジォニー「お前は優しい奴か?」

   竜二「俺の名前は、竜二だ。優しくもない。」

 ジョニー「俺の名前は、ジョニーだ。竜二は弱いのか?」

   竜二「弱いかどうか分からない。魔法の使えない魔法使いだ。」

 ジョニー「困っているのか?」

   竜二「金がなくて、困っている。」

 ジョニー「・・・。お前は仲間を殺すのか?」

   竜二「俺は殺さねー!俺は殺さねーー!俺は、お前らを殺さねーーー!」


 私は、殺さねー!と泣き叫んでいた。ジョニーも困った顔をしている。


 ジョニー「ヘイ、竜二!俺は、お前が気にいった。困っているなら

      助けてやる。仲間になってやる!」


 私は悪い奴だ。優しくなんかもない。正義なんか、どうでもいい。

私は偽善者になり、正義の味方でもなくなった。

そして、仲間を得た。さー、次はベジテだ。

ジョニーと一緒に、私はベジテの街に歩き出した。




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ