2 物語の脇役にも花束を
「あつ」
真夏の太陽に焼かれて敬太は学校に来ていた。
周りには多くの同じ学校の人がたくさん歩いていたが誰も敬太には目もくれない。だれも僕には注目しない。敬太は思う。どうして僕だけいつも一人なんだろう。
「敬太くん、今日の補修はここからここまでを解くことね」
数学の女性の先生に言われて解き始める。教室には何人かいたが、やはり敬太は隅で一人だった。涙はでなかった。そういうもんだと思っていたし困ることもなかった。仲のいい人はいる、その人の中で敬太の優先度は低いけど。
窓の外では部活動でサッカーをしている声が聞こえる。暑いのによくやるなと思う。みんな彼女がいて友達がいて、成績もいい。何かひとつわけてほしい。そんな声は届くことはなく、敬太は一人で家でアイスを食べるのが一番の楽しみだった。
「ねー後で遊ぼうよ」
「いいよー」
女子たちが騒いでいる。友達もいない敬太にはうらやましくなかった。強がっているわけじゃない。敬太は、同じクラスのほのかという女の子が好きだった。ほのかは全く目立たない女子でおさげで、めがね、つねに上着を着て体のラインを隠している。そんな女の子だった。
敬太は当時のことを思い出す。
文化祭の日、一日中一人でクラスの準備をしていた。
「敬太くん、一人?手伝うね」
そう言ってほのかさんだけが最後まで一緒にいてくれた。ほのかさんは友達とずっと話したりしていて敬太とはほぼ会話していない。でも、それが一番の高校生活での思い出だった。
「おわった」
敬太はつぶやくとノートをもって先生に出しに行った。
職員室はすずしかった。それすらうらやましいとは思わなかった。何も得られない自分にはふさわしいからだ。
採点が終わり帰路に着く。もう、用事はなかった。
でも、なんとなく図書室に行く。敬太は、思う。見るだけ。だれもいないだろうけど。別に本を見るだけだ。そう言い聞かせて。
神のいたずらだろう。ほのかはいた。どうしよう。ほのかさんだ。本を読んでる。今日もかわいいな。じろじろ見るのは明らかに変人であったがその場には二人しかいなかった。ほのかの顔が上がる。敬太は慌てて顔を下げる。
「あれ。敬太くん」
今気が付いたかのように敬太は顔をあげた。
「あ、うん。こんにちわ」
「本読みに来たの?」
「まぁ、調べ物を」
「そっか、楽しんでね」
にこっと笑って本に戻る。それがなんだか悲しかった。ほかの何がなくても感じないけど敬太にとってほのかだけが心残りだった。
「あ、あ、ああ、ああのちょっといいかな」
「え?なに?」
敬太は息を吸う。頭の中に二文字が浮かぶ。言うのか?僕。言っていいのか?思考がぐるぐる回る。でも、今しか言えないよ。そう決めた。
「あの、僕、ほのかさんが好き。そ、その付き合ってほしい」
「え?」
ほのかはあっけにとられて本を落とす。
「あ、落としたよ」
「あ、うん。大丈夫。本当に?」
「うん。好きです」
「そっか」
「うん、あの返事はまた今度でも」
早く帰りたくなる。怖い。
「いや、今言うよ」
「うん」
「ごめんなさい」
「そっか、ごめんね。急に」
「ううん、私こそごめんね。敬太くんは友達だから」
「そうなんだ。はは、友達としてよろしくね」
そう言って早々と図書室を出た。外に出たとき涙がでた。でも、すべて蒸発していく。図書室になんとなく行って、二人きりで僕は勇気がわいた。なぜなら日頃チャンスはなかった。だからこそあれは神様がくれたチャンスだったと思う。でも、僕じゃ力不足だったね。敬太は、思った。
明日の始業式は、人生で新しい時間の始まりだ。今日は、今日。明日は明日。
だれか僕に花束くれるかな?




