1 幼馴染と嘘
「星子?」
俺は気が付けば彼女の名を呼んでいた。
「うん?あれ、細道じゃん。何してんの?」
「それはこっちのセリフだよ。帰ってたのか?」
「まぁね。会社でまぁ、なんか昇進してね、一旦帰ってきたの」
「おめでとう」
こんな深夜の誰もいない公園で出会うとはな。星子の話を聞いて俺はなんだか居心地が悪かった。俺たちはブランコで一緒に揺られた。
「十年だよな」
「そうね。あっというまだったわ」
「その、結婚とかしてるのか?」
「まぁ、そうね。彼氏がいるけど今年結婚するつもり。東京で出会ったの」
「よかったな」
「まぁね」
星子はなんだかテンションが低かった。深夜だからかな?
「細道はどうなの?彼女とかは?」
心がずきずきするけど聞かずにはいられなかった。
「一応いるよ。でも、俺は海外に今度行くんだよ。その仕事で。だから大変でさ」
「すご。そんな仕事してるんだ」
「まぁね」
細道はすごいな。私とは違って。全部嘘だ。彼氏なんていないし。就活に失敗して仕事がうまくいかなくて逃げてきたのに。ばかだな。初恋の細道だからって強がらなくてもいいのに。でも、元気な姿を見せたかった。今の私は笑顔でいられてるかな?
「いつまでいるんだ?」
「うーん、しばらくはいるけどね」
「そっか。彼氏のこと大事にしろよ。お前、すぐ強がるから」
「うるさいなー。大丈夫よ。もう、子供じゃない」
「あはは、ならいいな」
私は、なんだか細道を直視できなくなってきた。細道が元気そうでよかった。でも、なんだか寂しかった。
俺は馬鹿だ。海外に行くのも、上司に無理やり連れていかれるからだし彼女なんてできたことは無い。初恋の星子の前だからって強がってるのは俺の方か。なんだか、弱い姿を見せたくなかったんだ。今もし、時間が残れば俺は気持ちを言ってしまうかもしれない。それはお互いのためにならないに決まってる。
「そろそろ、帰るわ」
その言葉を聞いて私はもう我慢ができそうになかった。でも、我慢しなきゃ。今泣いたら細道の邪魔になっちゃう。だから言う。
「うん、私あっちだから。じゃあね」
俺はもう振り返れなかった。
「じゃあな」
私はもう振り返れなかった。
「うん」




