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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第39話 影の使命

朝の混乱がようやく収まり、

兵士たちが散っていったあと。

アーレンはカスミの前に歩み寄った。

その目には、戦場を知る者の現実的な判断が宿っている。


「いや、助かった。あんたの助けが無かったら

今頃全員あの世行きだったかもな。

で、ちょっと相談したいことがある」


カスミは静かに目を向ける。

「何でしょう?」


「地底人の出入口となる裂け目の探索に協力してほしい。

地底人の動きが活発すぎる。

このままでは、どこから奇襲されるかわからん。」


カスミは一瞬だけ沈黙し、

そして淡々と告げた。


「……申し訳ありませんが、

あなたの命令を受けることはできません。」


アーレンは眉をひそめた。

「……なぜ?」


カスミは迷いなく答える。


「私の主は小島のお館様。

それ以外の方の命令に従うつもりはございませぬ」


その言葉には、

揺るぎない忠義と誇りがあった。


アーレンはため息をつく。

「……そうか。

東国の“影”というのは、本当に徹底しているんだな。」


そのとき、シオリが歩み寄ってきた。

「カスミ。」

カスミは即座に膝をつく。

「はい、シオリさま。」


シオリはアーレンの顔を見て、

そしてカスミに向き直った。

「アーレンさまの言う通りです。

裂け目の探索は急務。

その所在を確かめるために

私もここにいるのです。どうか力を貸してください」


カスミは静かに頷く。

「……承知いたしました。

シオリさまのご命令とあらば。」


シオリは柔らかく微笑んだ。

「ありがとう」

カスミは深く頭を下げる。

「そのようなお言葉、

もったいのうございます」


アーレンはそのやり取りを見て、

思わず苦笑した。

「……シオリ、お前の家って、どうなってるんだ?」


イオリは腕を組み、

複雑な表情で呟いた。

「……カスミ、頼んだぞ。」


カスミは短く答える。

「命に代えても。」


その言葉に、イオリはわずかに目を伏せた。

カスミはすぐに部下たちへ指示を飛ばし、

他の影たちが音もなく動き出す。


「情報も無しにいきなりいっちまうのか?」

アーレンは驚いた。


カスミは落ち着き払った様子で、

「皆様方がこの地にやってきたころから、

ずっと、周辺を調べておりました。

実は、それらしき場所の目星もついております」


「凄いな…うちの町にも

あんたみたいな人がいてくれたらいいんだけどな・・・」


「御戯れを、シオリさま、行ってまいります」

カスミはふっと姿を消した。


アーレンはシオリに顔を向けた。

「なぁ、どうして黙っていたんだ?シオリ?

人が悪いなぁ、あんなに強いやつが身近にいたなんてよ」


「いえいえ、決してみなさんを

信用していないからではなく、

さきほどの兵士たちのようなことになるのを恐れていたのです。

事が起きるまでは紹介は無用だと

思っておりました…」


「まぁ、そういうこともあるか。

でも、小島家って本当にすごいな」


「あの船の上で地底人に襲われた一件以来、

父上も心配しているのでしょう。

以前はカスミ一人だったのに、

今回は知らぬ間に6人に増えておりました」


隣でやり取りを見ていたジュリアンがいた。


(シオリさんを守るのは私…のはずなのに

シオリさんのまわりは化け物クラスばかり。

私の出番が…いや、命にかえても彼女を守るのが我が騎士道…

これはゆずれないな)


などと考えていた。


(しかし…今さら剣の修行に励んだとしても

アーレンほど強くはなれず、

イオリほど素早く斬ることなど不可能、

私はどうすれば彼らに追いつけるのだろう?)


ジュリアンは首を振った。

(だが、方法はある。

地底人の技術のように、弱点を埋めるものが

絶対にある。それを見つける必要がある)

なんとなく大きな流れを感じている。


(おそらく、今回のようなことは

これから先何度でも起きる。

私はしおりさんを守れる力が欲しい)


ジュリアンの心に小さな灯がともった。


兵士たちも一連のやりとりをきいて、

ホッとしている面々もいる。

残念ながら、東国の人たちのほうが

魔物相手に戦う術を知っている。


アーレンは兵士たちに、

警戒を強化するように命令した。

「いいか、鬼影の連中が帰ってくるまで、

しっかり見張っておけ。やつらは夜に襲ってくる。

昼間は多少安全だが、何が起きるか

わからないぞ」


兵士たちは持ち場に戻っていった。

アーレンは少し気になったのでイオリにきいてみる。


「なぁ、イオリ。

シオリはあの影とすごく親しそうだが、あんたは

なんとなく嫌っているように見えるんだが…」


「影とは必要悪とでも申しましょうか、

小島家にとって有利になる情報を集めたり、

要人を守ったり、そして…

邪魔ものを始末することもありまする。

きれいごとだけの世界ではござらぬ」


アーレンはイオリのまっすぐな性格から、

影のような正邪の境目にある存在が

好きになれないのだろうと思った。


「それに、主の気まぐれな命により、

命を落とすこともある…

そして、それを憐れむ人もおらぬ。

それが許せないのでござる」


アーレンはイオリが影と距離をおきたがる

理由を少し理解したような気がした。


「父上も我々を心配してのこと。

それはわかるが、拙者のかわりに

他の誰かが命を落とすなど、

考えたくもない」


アーレンは自分がなぜイオリと

気が合うのか、よく分かった。


(逆に、仲間のためなら自分の命など

顧みないタイプなのにな…だから、

俺もお前を全力で守りたくなるんだよな)


気がつくと、岩陰でシオリが眠ったように動かない。

また内響?とジュリアンがそばで確かめる。

だが、呼吸がかわいらしい寝息にかわっている。


(…お疲れ様です。今は私がお守りします。)


ジュリアンは盾を構え直し、まわりを警戒し始めた。

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