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魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした  作者: 茜カナコ


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8.工房へ

「それじゃあ、頑張ってね」

「ありがとうございました」

 街の入り口で女性と別れると、僕は錬金術工房を探した。


「たしか、この街には錬金術工房があるはず……。でも、どこだろう?」

 僕は街の賑やかな方に向かって歩いてみた。

「宿屋とか食べ物屋さんはあるけど……錬金術工房は見当たらないなあ……」

 考えていても仕方がないし、歩き回るにはもう疲れすぎている。


 僕は勇気を出して、適当なお店に入り、聞いてみることにした。

「すいません」

「はい! いらっしゃいませ!」

「あの、すいません、道を教えて欲しいんですが」

「……はい」

 お店の人は愛想笑いをこわばらせた。

「錬金術工房があると聞いているのですが、ここからどうやって行けばいいですか?」

「あー。マクネアー工房のことかな? それなら店の前の大通りを王宮に向かってしばらく歩いて行くと右手にあるよ。でも……」

「でも?」


 お店の人は僕の恰好を見て、値踏みするような眼をした。

「あそこの店は高いから、君みたいな子どもが買い物できるところじゃないよ」

「……」

 僕はボロボロになった外套を隠すように体を抱きしめて、うつむいた。

「……分かりました。ありがとうございます」


 逃げるように店を出ると、大通りを王宮に向かって歩き出した。

「にぎやかだなあ……」

 立派な建物や色とりどりの看板を見ながら、大通りを進んで行く。


 ひときわ立派な石造りの建物が見えてきた。看板にはマクネアー工房と書いてある。

「あ、ここだ……!」

 僕は緊張しながら、ガラス張りの重いドアをそっと開いた。

「いらっしゃいませ」

 二十歳くらいだろうか? 品の良い男性が声をかけてくれた。

「初めまして、あの……僕、錬金術師になりたくて……! こちらで雇ってもらえませんか!?」

「……こちらへどうぞ」

 若い男は店の奥を抜け、裏口から店の外に出た。僕も後をついて行く。

 店の裏手で、若い男が僕に尋ねた。

「紹介状はお持ちですか?」

「いえ、あの……持っていません」

「……では、お帰り下さい」

「掃除でも水汲みでも、なんでもします! 僕、どうしても錬金術師になりたいんです!」

 若い男の顔が、怒りで歪んだ。

「お前みたいな、ただの子どもが錬金術師になれるはずがないだろう!? 馬鹿にしてるのか!」

 若い男が声を荒げた。僕は一歩後ずさったが、なんとかそこで踏みとどまり、カバンから小瓶を取り出した。

「これは僕が作ったポーションです! 工房主さんに会わせてください!」

「お前みたいなガキがポーションなんて作れるはずないだろう! 嘘をつくな!」


 僕たちが言い争っていると、店の中から恰幅の良い中年男性が現れた。

「デニス! 店を留守にして、なにをしているんだ? その子どもは何だ? 一体どうしたんだ?」

「ニコラス様!? ……実は、この子どもが錬金術師になりたいから、やとってくれと……身もわきまえずに……」

 デニスは眉間にしわを寄せたまま、ニコラスに訴えた。


 ニコラスは愛想笑いを浮かべ、子供に言い聞かせるような口調で僕に言った。

「坊や、錬金術師になれるのは選ばれた人だけなんだよ? 私のような立派な錬金術師にあこがれるのはわかるけれど、無理なものは無理なんだ。大人しく家に帰りなさい?」

 僕は食い下がった。

「でも、僕だってポーションなら作れます! 頑張れば、錬金術師になれるはずです!」

 僕が小瓶をニコラスに差し出すと、ニコラスの眉がピクリと動いた。


「……坊や、よく見たら傷だらけだね。それがポーションだというなら、飲んでみてもらえるかな?」

 口元だけで笑っているニコラスの目を見て、僕は頷いた。


 小瓶のふたを開け、ポーションを一口飲む。

 体中がほんのり温かくなった感じがして、手の傷が消えていった。

「……ほう……」

 ニコラスの顔から一瞬笑みが消えた。


「……本当にそれは君が作ったのかい?」

「本当です」

「それなら私の目の前で作れるかい?」

「はい! 材料があれば!」

「……よろしい。本当にポーションが作れるのなら、ここで見習いとして雇うことも考えてあげよう」

「ニコラス様!?」

 デニスが目を見開き、ニコラスと僕を交互に見つめた。


「本当ですか! ありがとうございます!!」

 僕が微笑むと、ニコラスも微笑んだ。


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