表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした  作者: 茜カナコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/28

5.誤解

「貴様、私の顔に泥を塗ったな! この盗人が!!」

 父上の声があたりに響き渡る。

「落ち着いて、貴方。一体何のことですか?」

 母上が慌てて僕と父上の間に立った。

 父上は母上を左手で押しのけると、僕のシャツの襟首をつかみ殺気に満ちた顔を僕に近づけた。


「コリンに売った『ポーション』は、どこで手に入れた!? いつ街に行って盗んできたんだ!?」


 僕は緊張で口の中がカラカラになるのを感じながらも、父上の目を見てなんとか答えた。

「盗んでいません。……僕が作ったんです」


 父上は僕を突き飛ばした。倒れた僕が父上を見上げると、父上は手を腰に当て仁王立ちで僕を睨んでいる。

「そんな嘘で騙せると思ったのか? あきれたやつだ。魔法さえも使えないお前が、ましてや錬金術など使えるはずがない! 泥棒の上に嘘つきとは……救いがたいな、お前は!!」

 僕が茫然として父上を見上げていると、父上はチッと舌打ちをして言った。


「……しばらくその不快な顔を私に見せるな。部屋にでも籠っていろ!」

 父上は心底不快そうな目で、僕を見下げた。

「食事にも顔を出すんじゃないぞ!」

 そう言い残すと、父上は地面を踏みつけるように歩き家の中に戻って行った。


「……メルヴィン、もしかしてこのお金は……」

 母上が先ほど渡した金貨を手に乗せて、不安げな表情で僕に尋ねた。

「コリンさんから受け取った『ポーション』の代金です。『ポーション』は、僕が作りました」

「……すごいわ、メルヴィン」

 母上は一瞬微笑を浮かべたが、困ったような悲しそうな表情になり僕に言った。


「でも、お父様を怒らせてはいけないわ」

 母上の諭すような口調に、僕はいらだった。

「僕は嘘をついていないし、盗んでもいません!」

「……分かっているわ。でも、お父様は絶対なの! ……部屋に戻って、メルヴィン」

 母上は苦いものを飲み込んだような顔でそれだけ言うと、うつむいて唇を震わせていた。


 ***


 僕は部屋に戻った。父上が許すまで、「トイレとお風呂の時以外は部屋から出ないように」と母上から言われた。


「まさか、こんなことになるとは思わなかったな……」


 一週間たっても、部屋から出ることは許されなかった。


 僕は物書き机の椅子に座ると、ポケットから『世界の理』を出し、最初のページから読み直した。

「あれ? 最後のページ、なんか変だな……? ページがくっついてるのかな?」

 『世界の理』の最後のページは張り付いていて、めくろうとすると紙が破れてしまいそうだ。


「まあ、いいか。二ページくらい読めなくても」


 僕は『世界の理』に書かれている『回復薬』や『毒消し』、『しびれ薬』、『爆薬』などの作り方を読み直した。

「やっぱり、色々作ってみたいな……。でもこの家にいる限り、自分の思い通りにできることなんてないし……」

 僕は机に突っ伏して、ため息をついた。


「いっそ、家を出て、錬金術工房に弟子入りしようかな……。それで、立派な錬金術師になって、母上と一緒に暮す、なんてね……」


 ばかげた空想に過ぎないと苦笑した。けれど何度も考えるうちに、もしかしたら意外と可能性のない話じゃないかもしれない……と思うようになった。


「そうだよ、なにもこんな家にずっといないといけない理由は無いよね!?」


 僕は胸がドキドキと高鳴るのを感じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ