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魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした  作者: 茜カナコ


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3.回復薬?

 玄関に着くと、辺りに人がいないことを確認してから、小瓶に入れた『回復薬』の半分を枯れた木の根元にかけてみた。

「こんな少しじゃ、効果は無いかな……?」

 回復薬をかけたあたりに水もかけてみる。少しすると、根元から細い枝が生えてきた。

「え!? もしかして、効いてる?」

 僕が枯れ木を見つめていると、ふいに声をかけられた。


「メルヴィン様、お世話になっております」

「あ……」

「何かございましたか?」

 話しかけてきたのは出入りの商人、コリンだった。

 僕は作った回復薬をポケットに隠し、微笑んだ。

「なんでもないですよ」

 僕が返事をしたとき、枯れ木から生えてきた細い枝に一気に葉が茂ってきた。

「……これは!?」

 枯れ木を見つめるコリンさんに、僕はごまかすように説明をした。


「あ、えっと……『回復薬』らしいものを手に入れたので、ちょっと試してたんです」

 あわてながら僕が言うと、コリンさんは目を輝かせて聞いてきた。

「回復薬? 『ポーション』ですか!? 是非見せて頂けませんか?」

「えっと……見せるほどのものでは無いです」

 僕は右手をポケットの中に入れて、小瓶を握りしめた。


 コリンさんはがっかりした様子で「そうですか」と残念そうな笑顔を浮かべた。

「もしメルヴィン様のおっしゃる『回復薬』が、『ポーション』なら小瓶一つを金貨一枚で買い取れるんですが……」

 僕は驚いて聞き返した。

「え? 小瓶一つをそんな高値で?」

 それだけのお金があれば、一か月は母上と僕の食事も兄上たちと同じように豪華にできるだろう。


コリンさんは、目を丸くした僕を見ながら言葉を返した。

「はい。『ポーション』を作れる錬金術師は多くないのに、欲しがる冒険者は多いですからね。自然と値段も上がります」

 コリンさんは僕の目を見て、愛想のよい笑みを浮かべた。


「そう、ですか」

 でも、僕の作ったのは『回復薬』であって、それが『ポーション』だとは限らない。それに『回復薬』といっても、効果が確認できたのは植物だけだ。少し悩んだけれど、僕は思い切ってコリンさんに尋ねた。


「あの……これが『ポーション』かどうか確かめていただくことは可能ですか?」

 僕はポケットから『回復薬』の入った小瓶を取り出し、コリンさんに見せた。

「……分かりました。この『回復薬』は、どこで手に入れたものですか?」

「それは……言えません」

「そうですか……。ほかにも『回復薬』はありますか?」

 コリンさんは探るような視線を僕に向けた。

「えっと……まあ、無くはないです」

「そうですか。まあ、とりあえず『回復薬』をお預かりして、品質を検証してまいります」


 コリンさんは僕から『回復薬』を受け取り、にっこりと笑った。


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