27.ビルのノート
早朝、ドアをノックされる音で目を覚ました。
「はい」
ドアを開けると、袋を持ったビルが立っていた。
「おはよう、メルヴィン。僕の使ってたノートを持って来たよ。よかったら、使って」
「ビルさん……。ありがとうございます」
「ううん。僕のせいで父さんに睨まれちゃったでしょ? ……罪滅ぼしじゃないけど、せめて僕にできることは手伝いたいと思って。他の人には内緒だよ」
僕はビルから袋を受け取り、中を覗いた。厚みのあるノートが10冊くらいと、ひもで縛られたノートが10冊くらい入っていた。
「見ても良いですか?」
「どうぞ」
一番上のノートを取り出し、開いてみる。ノートには『この世界にあるものは4つの属性に分類される』とか『薬草の種類による抽出時間』とか、僕にもわかる言葉で錬金術のことが書いてあった。
「ビルさん、本当に借りちゃっていいんですか?」
「うん。僕はもう、そのノートの内容は覚えてるから大丈夫。新しいノートはメルヴィンにあげるよ。僕のノートを返すのは、必要なところを移し終わったらで良いから。紐でくくってあるのは使っていないノートだから、あげるね」
「いいんですか!? でも、こんなに気を使ってもらうなんて申し訳ないです」
ビルは首を横に振った。
「気にしないで。試験に向けて頑張ってね、メルヴィン」
「ありがとうございます」
「それじゃ、また工房で」
「はい」
僕は部屋を出て、ビルを見送った。
「ビルさん、本当に親切だな」
丁寧な字で書かれたノートを見ながら、僕は部屋の中に戻った。
***
仕事が終わってから、ビルに声をかけられた。
「メルヴィン、明日は図書館に行けそう?」
「はい。大丈夫です。よろしくおねがいします」
ビルはにっこりと笑って頷いた。




