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魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした  作者: 茜カナコ


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26.作戦

「メルヴィンはあきらめないんだね」

 ビルが驚いたように口を開いた。

「精一杯やってみてダメだったら、その時また考えます」

 僕にできるのは、出来ることを精一杯頑張ることだけだ。

 ビルはちょっと考えてから僕に言った。

「それなら……僕が去年まで使っていた資料とノートを持ってくるよ。メルヴィン、よかったら使って」

「ありがとうございます。僕、そもそも錬金術大会が何なのか分かってなかったです。優秀な錬金術師を決める大会なのかなって思ってる程度で……。四錬金術師っていうのも初めて聞きました」

「ああ、それならもう少し詳しく説明すると……」


 ビルが話を始めようとしたとき、フランクが口を開いた。

「そろそろ店の準備をしなくてはいけない時間です。私語は慎んでください」

「あ、もうそんな時間か。ごめんね、メルヴィン。また後で」

 ビルも持ち場に向かって移動し始めた。

「はい」

 僕たちはそれぞれの持ち場について、開店の準備に取り掛かった。


***


「お疲れさまでした」

 閉店後の片づけが終わると、フランクは帰り支度を始めたが、ビルは帰る様子がなかった。デニスがこちらの様子をうかがっている。

「メルヴィン、もう一度、錬金術大会について説明していい?」

「おねがいします」

ビルはカウンターの椅子に腰かけた。僕はビルの向かい側に立って話を聞いている。

「錬金術大会は二年に一度開催されるっていうのは説明したよね?」

「はい」

「で、錬金術大会の前年に一般参加部門の選考会があるんだ」

「はい」

「一般選考では、まず筆記試験で人数が絞られる。でも、錬金術大会は実技重視だから、基本的な錬金術の知識があれば筆記試験はそんなに難しくないって聞いているよ。で、筆記試験に合格したら、実技がある。実際に錬金術で薬を作って、その品質が良い順に10名が選ばれる。毎年、筆記試験を受けるのは20名ちょっとかな? 国が錬金術の才能がある人を見つけるために開催しているイベントだから、参加費は無料だよ。だけど、錬金術を使える人がそもそも少ないから……。少数精鋭の戦いになるんじゃないかな?」

 ビルは、メモ帳に図解しながら、僕に説明してくれた。

「参加人数はそんなに多くないんですね」

「まあ、そうだね」

 僕がビルの書いたメモを見つめていると、ビルが僕に尋ねた。


「メルヴィン、錬金術大会の勉強をするなら、図書館を使うと良いと思うんだけど、どうかな?」

 僕は顔を上げてビルを見た。

「図書館ですか? 僕、行ったことありません」

「それなら、次の休みにつれていってあげるよ」

「ありがとうございます」


「ビルさん、メルヴィンは掃除とか食事作りとか、仕事があるから図書館に行く時間なんて無いと思います」

 僕たちの話に聞き耳を立てていたデニスが、挑むような眼で僕を見た。

「それは、なんとかします」

 僕はデニスの目を見つめ返した。

「ったく、なんでビルさんはこんな奴の面倒を見るんだか」

 デニスは冷めた目を僕に向けた。


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