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魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした  作者: 茜カナコ


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25.ニコラスからの通達

 休日が終わり、仕事はじめの朝。

 デニスと僕が店の掃除をしているとビルとフランクがやってきた。

「おはよう」

「おはようございます」

 四人で開店準備をしているとニコラスがいつもより早い時間に店に現れた。

 ニコラスは冷めたような表情でみんなに声をかけた。

「今日は連絡がある。メルヴィン、お前、給与が低いとビルに言ったのか?」

 ニコラスの冷たい視線が僕に刺さる。

「いえ、そんなこと言ってません」

 僕が驚いてビルを見ると、ビルは困ったような顔をしていた。


「メルヴィンの給与を上げるよう、ビルに頼まれた。よろしい。私は実力に見合った給与を与えよう。メルヴィン、お前は来年の『錬金術大会』の一般参加枠で上位三名に入れ。そうしたら給与を上げてやる。しかし、上位三名に入れなかったら、この工房から出て行ってもらう」

 言い終えたニコラスは店を出て行こうとした。


「そんな!? 父さん!? 待ってください!」

 ビルが青ざめた顔でニコラスを追いかける。

「素直なビルをたぶらかした罰だ。ビルの人の好さを利用して、実力に合わない要求をするなど図々しいと思わないか、メルヴィン?」

 突然の出来事に僕は何も反応できなかった。


「父さん、メルヴィンはそんな要求していません」

 ビルの必死の訴えをニコラスは右手を上げて制した。

「ビル、お前は利用されているんだ。目を覚ませ」

「でも、父さん。『錬金術大会』の一般参加で勝ち残れるのは、国から認められた四錬金術師と同等の力がある人だけじゃないですか!? メルヴィンはまだ錬金術を始めたばかりなんですよ!?」

「私の決めたことに文句があるのか?」

 ニコラスは冷めた目でビルを見た。

「そもそも、メルヴィンが自分の身の丈に合わない要求をしたのが間違いなのだ。身から出た錆だと思いなさい」

 ニコラスの刺すような視線を受け、僕は体が固まった。


 ニコラスが店を出て行くと、ビルが僕に言った。

「ごめんね、メルヴィン。なんだか、父が誤解しちゃったみたいで……」

 僕はニコラスの言葉を思い出し、ビルに尋ねた。

「あの、四錬金術師って何ですか?」

 うなだれているビルに代わり、フランクが口を開いた。

「赤錬金術師、青錬金術師、白錬金術師、黒錬金術師。この国を代表するトップの錬金術師四人のことだ。つまり、お前は国家錬金術師と肩を並べられなければ、この工房から破門されるということだろう」

 フランクは感情のこもらない声で淡々と説明した。


「お前、馬鹿だな。この工房に入れたのはラッキーだったのに、欲を出したせいで台無しだ。短い付き合いだったな」

 デニスがにやにやと笑いながら、僕に言った。

「本当に、ごめん、メルヴィン……。僕に手伝えることなら、なんでもするから」

 泣きそうなビルに、僕は言った。

「……僕、一般試験に合格して、ここに残れるよう頑張ります」

 ビルが目を丸くした。デニスはフン、と鼻で笑う。フランクは僕のことをちらりと見ただけで無反応だった。


 僕に帰れる場所はない。

 なんとしても、錬金術大会で良い成績をとるんだ。

 だって、僕は一人前の錬金術師になって、母さんを迎えに行くんだから。


「錬金術大会のこと、詳しく教えてください」

 僕はみんなに頭を下げた。


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