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魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした  作者: 茜カナコ


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24.デニスの忠告

 部屋に干していた洗濯物をたたみ、片づけをしてから部屋を出た。広間に行き薬草辞典を読んでいると夕方の鐘が鳴った。

「あ、そろそろ夕食作らなきゃ」

 最近はデニスに教えられたスープを作って、パンを切って並べておくのが僕の仕事になっていた。


 下に降りて台所で野菜を切っていると、デニスがやってきた。

「メルヴィン、ビルさんと随分仲良いみたいじゃないか」

 様子をうかがうような眼で、デニスが僕を見た。

「仲良いというか、気にかけて頂いてます」

 デニスは不満げに「フン」と鼻を鳴らして食堂の椅子に腰かけ頬杖をついた。

「上手くやってるな」

 卑屈な口調でからかうように言ったデニスに、「上手くなんて……」と僕が返事をして、その後に黙ると、部屋は居心地の悪い沈黙で満たされた。


 ぐつぐつと煮える鍋の音を聞きながらパンを切り皿にのせ、デニスの前と、向かいの席に置く。僕はふと思いついて、デニスに尋ねた。

「デニスさんは『錬金術大会』には出ないんですか?」

「嫌味か?」

 デニスは僕のことをじろりと見てから、口元をゆがめた。

「あの、僕『錬金術大会』のこと、何も知らなくて」


 デニスは、ふう、とわざとらしいくらい大きなため息をついてから、僕に言った。

「『錬金術大会』に出られるのは国から指名された有名な錬金術師と、錬金術協会に登録された錬金術工房から、それぞれ代表一人。あとは一般参加枠の試験の上位者三人だけだ。選ばれた人間だけしか出られないんだよ」

 デニスは人差し指を僕に向け、強い口調で念を押すように付け加えた。

「わかったか? つまり、お前には関係ない話だ」


 僕はスープを運びながらデニスに聞いた。

「マクネアー工房からはニコラス様が出るんですか?」

「ニコラス様とビルさんだな。工房代表でビルさん、国からの指名でニコラス様が出る」

「そうなんですか」

「まあ、実力で言ったらビルさんよりフランクさんだと思うけどな、俺は。あ、絶対に誰にも言うんじゃねえぞ」

「……はい」


 僕とデニスは一緒に夕食をたべた。

「デニスさんはなんで錬金術師を目指してるんですか?」

「金のために決まってるだろ?」

 デニスは硬くなったパンをスープに浸してから口に運んだ。

「たしかに、ここじゃ見習いのうちは大して給与はもらえないけどな。マクネアー工房で修業したっていえば箔がつく。一人前になるまでの我慢さ。一人前の錬金術師になれば、金には困らない」

「そうなんですか?」

「まあ、今は食費や住み込みの部屋代は引かれるし余裕はないけどな」

 デニスは短く刈った癖のある赤毛をかき上げながら、口の右端を上げた。


「お前も似たようなもんだろ?」

 デニスの問いかけに僕は答えた。

「僕は、早く一人前になって、母さんと一緒に暮らしたいんです。それに、錬金術で人を幸せにしたいんです」

「人を幸せに? ……あんまり夢は見ないほうが良いぜ?」


 デニスは苦い顔をして、首を振った。


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