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魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした  作者: 茜カナコ


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23.郵便局

「そろそろ行こうか、メルヴィン」

「はい。おねがいします」

 ビルと僕は作業所の鍵をかけ、郵便局に向かった。


 歩きながらビルが僕に尋ねる。

「メルヴィン、手紙は急ぐの?」

「いえ、そういうわけでは無いです。母さんに、働ける場所が見つかってなんとか錬金術師見習いになれたって伝えたいだけなので」

 ビルが頷いた。

「そうなんだ。メルヴィンの手紙を読んだら、お母さんもきっと安心するよ」

 少し前を歩いているビルがふり返り、僕に優しく微笑んだ。


「ビルさんのお母さんは工房には来ないんですか?」

「……僕の母さんは三年前に亡くなってるから」

 僕はビルの背中を見つめ、息をのんだ。

「え!? あの、ごめんなさい」

「ううん。大丈夫だよ。まだ、時々寂しいなって思うけどね」

 ビルは前を向いたまま、明るい声で返事をした。

 僕はなんて言えば良いか分からず、口を結んだままビルについて行った。


「そろそろ郵便局が見えてくると思うんだけど……ああ、ほら、あそこ」

 ビルの指さす方を見ると、赤茶色の建物があった。

「お金はある?」

「一応、銅貨10枚なら持っています」

 僕はお金を入れているカバンを撫でながら答えた。

「それだけあれば足りるよ」

 ビルが郵便局のドアを開けた。

「よかった。僕の全財産だから足りなかったらどうしようかと思いました」

「え? 父さんからお給料もらってるでしょう?」

 ビルが立ち止まり、首を傾げた。

「まだお給料はもらってません。あ、でもニコラス様は生活の準備のためにお金を貸してくれました」

「そう……。とりあえず中に入ろう」

 郵便局の中に入ると、ビルは右手を軽く握り口元に当てて何かつぶやいていた。


 窓口で手紙を渡し、手数料を払うと「それではお預かりいたします」と事務員に言われた。手続きが終わり、そばで見守ってくれていたビルに感謝を伝えた。


「ありがとうございました。手紙、早く届くと良いな」

 僕がほっとしていると、ビルは頷いて「もう帰ろうか」と言った。


 ふと横を見ると、張り紙が目に入った。

「『錬金術大会、参加者募集中』? 錬金術大会って何ですか?」

 ビルが目を丸くした。

「知らないの?」

「はい」

「二年に一度、国で一番の錬金術師を決める大きなコンテストのことだよ」

「そうなんですか」

「次は再来年に行われる予定だよ。今年は森の錬金術師が優勝してたね。父さんは3番目だったんだよ」

「凄いですね」

「なんで俺が三番なんだ! って、父さん、しばらく機嫌悪かったなあ」

 ビルはその様子を思い出したのか、苦笑いをしていた。


 工房に戻ると、ビルは「またね」と言って家に帰っていった。

 僕は工房と食堂の掃除をして、鍵をかけ部屋に戻った。



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