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魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした  作者: 茜カナコ


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18/21

18.アクシデント

 翌朝、目を覚ました僕は着替えて顔を洗い、作業所に向かった。

「おはようございます。昨日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

「まったくだ」

 デニスが冷たい目で僕を見ている。

僕は気まずさを感じながら、朝の仕事に取り掛かった。


作業所の掃除をしているとニコラスが来て、僕に言った。

「メルヴィン、昨日のようなことがあるのは困るぞ? 今日はポーションを二つ作るように。それでも余裕があるようなら、明日はポーションを三つ作れ。まずは自分の力を把握しろ」

「……はい」

 ニコラスはそれだけ言うと作業所を出て行った。


 僕がうなだれているとデニスが鼻で笑った。

「調子に乗っているからだ」

「……」

 僕には返す言葉もなかった。


作業所の掃除を終えると、ポーション作りに取り掛かった。

「……あれ? ちょっと余っちゃったな……」

 作り終えたポーションを二本の瓶に移したが、入りきらなかった分が鍋に残っている。


「おはようございます」

「おはよう」

 ビルとフランクが作業所に入ってきた。

「おはようございます」

「おはようございます」

 デニスと僕が挨拶を返すと、ビルは笑顔で頷き、フランクは目礼をした。


 僕は鍋に目をもどし、残ったポーションをどうしようかと悩んでいた。

「どうしたの? メルヴィン、何か困りごと?」

 ビルが僕に尋ねる。

「あの、ポーションがちょっと残っちゃって……」

「捨てればいいんじゃない?」

「え……?」


 僕は残ったポーションを捨てるのも、もったいない気がしてため息をついた。

「あ、この小瓶、もうくすんでるから使えないな。メルヴィン、これも捨てておいて」

「はい」

 僕はビルから受け取った小瓶を見て思いついた。どうせ捨てるものなら、僕がもらっても問題ないんじゃないかな?

「あの、この小瓶とポーションの残り、もらっても大丈夫ですか?」

 僕がビルに尋ねると、ビルは少し考えた後で、「別に、良いんじゃないかな?」と答えた。


 僕は小瓶にポーションの残りを入れてポケットにしまった。


 水汲みと掃除、ポーション作りが終わった僕は、せわしなく動く皆をみながら、次は何をすればいいか考えていた。

「おい、メルヴィン。ぼさっと立ってないで仕事しろ」

 デニスが不愉快そうな顔で僕に言う。

「えっと、何をすれば……?」

「ったく、気がきかねえな。外の掃除でもしてろ」

 デニスの言葉に僕は頷き、箒を持って外に出た。


 表の道を箒で掃いていると、女の子が走ってくるのが見えた。

「元気だなあ」

 僕は横目で女の子を見て、掃除に戻ろうとしたとき、女の子が転んだ。

「うぇーん! 痛い!!! お母さんー!!」

 女の子は泣いている。

「大丈夫!?」

 僕は女の子に駆け寄り、立ち上がるのを手伝った。

「あ……手と膝、すりむいてる……」

 女の子のちいさな手と膝から、血がにじんでいる。

「ちょっと待ってね」

僕はポケットに入れていたポーションのことを思い出し、急いで取り出した。


「少し我慢してね」

 女の子の擦り傷に、ポーションを一滴たらすと、傷が消えていく。

「もう大丈夫だよ。まだ痛い?」

「……ううん」

 女の子は首を横に振った。


 ほっとして、僕は女の子に微笑みかけた。

「お兄ちゃん、ありがとう!」

 女の子は走って、来た道を帰って行った。

「気を付けてね!」


 女の子を見送って振り返ると、ニコラスが渋い顔で僕を見ていた。

「メルヴィン、今使ったポーションは店の商品じゃないのか? 誰の許可を得て使ったんだ?」

「あ、あの……ごめんなさい」

 僕はポーションの入った小瓶をぎゅっと握りしめた。


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