表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/151

ナンバルゲニア・シャムラードの日常 73

 ニードルは白い塊の上部に突き立てられていた。次第に空間の時間進行の差異が縮まり、周りが普通の光景になるとその目標がベルルカンなどでよく見られる前世代のアメリカ軍制式アサルト・モジュール『M5』であることが分かった。その胸部の装甲にがっちりとアンの機体の右腕から伸びたニードルが突き刺さっている。


『このまま行動を停止させます』 


 そう言うとアンは機体の左腕を使って暴れるM5の左腕を捥いだ。


「やっぱりM5の関節は弱いんですねえ」 


「まあ開発年代が違うからね」 


 島田の質問に答えるシャムの顔に笑顔は無かった。


『目標からの電信です。投降の意思を示しました。このまま……』 


 そこまでアンが言った時、急に機体のバランスが崩れた。乱れるモニター、背部に被弾したことを示すセンサー。


『背後からレールガンの狙撃!背部スラスター損傷!エネルギーバイパス部に20パーセントの損傷!離れます!離脱します!』 


 叫ぶアン。シャムは相変わらず難しい表情でモニターを眺めていた。


「味方を囮かよ……えげつないねえ」 


「よくある手だよ。このくらい意識しておかないと……アン!退避行動!」 


 シャムの言葉だが慌てるアンには届くはずも無い。法術ブースターの作動にはまだ力の蓄積が足りず、アンはただよたよた機体を後ろに進めながら川の中へと機体を進めた。次々に発射されるレールガンがアンの機体の右腕を吹き飛ばし、頭部にダメージを与えてモニターの一部に欠落が出始める。


『このまま水中に……!膝関節部分浸水!』 


 アラームが鳴り響く。アンは仕方なく水から出るが、今度は先ほどの装甲ホバーからと思われる攻撃は始まった。


「助けてあげないと……このままじゃ戦死ですよ」 


 島田の言葉を聞くとシャムは静かに部隊の執務端末に伝票を打ち込んでいたときとはまるで違う慣れた手つきでキーボードを操作した。


 モニターが暗転する。


『ふう……』 


 アンが大きくため息をついてシートに身を任せる。


「結論から言うと……」 


『分かってます』 


「じゃあ良いよ、降りて」 


 シャムの言葉にアンは手元のシミュレータ装置の電源を切る。シャムの見ていたモニターも暗転した。シャムはそのまま視線をうなだれてコックピットから這い出してくるアンに目を向けた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ