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ナンバルゲニア・シャムラードの日常 61

 誠が岡持ちにランの食べた酢豚定食の皿を並べている。どさくさまぎれてそんな彼に要が皿を差し出す。自然と受け取る誠。そんな彼をカウラが鋭い視線でにらみつけている。


「シャム、例の伝票。菰田の野郎に送り付けといたからな」 


 その様子を小脇に見ながら吉田がぼそりとつぶやく。


「ひどいよ俊平。だったらさっさとやってくれればいいのに」


「馬鹿。そんなことしたらお前さんはいつでも頼るだろ……じゃあ行くか」 


 そう言うと吉田は立ち上がる。アンもそれに釣られるようにして立ち上がった。


「もう行くの?」 


「なに、俺はセッティングをしておいてやろうとおもってさ。島田の奴もいろいろ忙しいだろ?」 


「そうだね」 


 珍しく気を使う吉田に合わせるようにシャムも椅子から飛び降りた。そのまま部屋を出ようとする吉田。


「じゃあ行ってくるね!」 


「おう!行って来い!」 


 ランに見送られてシャム達は部屋を出た。アンが心配そうな表情で後に続く。そんな一行の目の前には技術部の古参兵と管理部の背広組と警備部の新人二人を連れた菰田だった。


「あ、吉田少佐。ありがとうございました!」 


 脂ぎった顔を驚きで満たした表情で菰田が吉田に頭を下げる。その顔がにんまりとした笑みに変わりながらあがってくるのを無表情で見つめていた吉田が首をかしげる。


「え?何が?」


「あの、伝票……本当に助かりましたよ」 


「ああ、その件ね。あのさあ。俺達に面倒ごと押し付けるの止めてくれないかな?」 


 淡々と言葉をつむぐ吉田を見て笑顔が急に凍りつく菰田。周りの『ヒンヌー教徒』達も吉田の表情の変化に全身系を集中している。伝説の傭兵として知られた変わった経歴の持ち主の義体使い。相手にするにはあまりにも異質で理解を超えている存在を前にしての緊張。そして明らかに吉田は菰田達を良く思ってはいない。


「……以降気をつけます!」 


「ああ、分かってくれりゃあいいよ」 


 吉田の言葉が終わらないうちに菰田は管理部に飛び込んだ。取り巻きもそれぞれに自分の部署へ小走りに消えていく。


「痛快ですね!」 


 アンの言葉に同じような冷たい視線を浴びせた後、吉田はシャム達を引き連れてそのままハンガーが見える踊り場へと歩き出した。



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