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ナンバルゲニア・シャムラードの日常 59

 突然部屋の扉が開いて入ってきたのは第四小隊の面々だった。


「それにしても……出前ばかりじゃ飽きないか?」 


「マルケス中尉。ハンバーガーでも同じじゃないですか?」 


「なんだよ、アン。生意気な口を利きやがって」 


 口の端に着いたケチャップをぬぐいながら小柄で陽気なラテン系のフェデロ・マルケス中尉は突っ込みを入れたガムを噛んでいるアンに苦笑いを浮かべながら答える。


「今日はオメー等も3キロ走には参加だかんなー」 


『ゲ……』 


 ランの一言にフェデロとその後ろで髪を櫛でとかしていたジョージ岡部中尉が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


「俺達もいつまでもお客さんというわけには行かないだろ?まあ当然だろ。アメリカ海軍が最強だということを知らしめてやろうじゃないか」 


 鷹揚に笑うロナルドが立ったまま哀願するような視線を黙って丼飯を掻き込むランに向けている二人の肩を叩いた。落ち込んだように自分達の机に向かう二人。


「そう言えば今日は第三小隊のお二人さんがいないからな」 


 フォローを入れたつもりの吉田の言葉だが、生体部品の塊で走るとただ体組織を壊すだけということでランニングに参加しない吉田に言われたところで二人の落ち込んだ気持ちはどうなるものでもなかった。


「でも岡部ちゃんは早いじゃん」 


「ナンバルゲニア中尉が本気を出したときほどではないですよ」 


 座りながらシャムに向けるジョージの目に光があった。


 空間制御系法術。シャムもジョージもどちらも得意な法術である。自分の周りの空間の時間軸を周りの時間軸より早く設定することで光速に近い速度を獲得できる能力。これは何度かの法術発動訓練でシャムがジョージに指導している課題の一つだった。


「言っとくけどそんでも3キロは3キロだからな」


 ランに当たり前のことを言われて今度はシャムまで落ち込んだ。


「良いじゃないですか。この仕事は体が資本ですから」


「神前。ならオメーは6キロ走るか?」 


「クバルカ中佐……」 


 薮蛇の言葉に思わず誠は苦笑いを浮かべながら振り向いた。



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