ナンバルゲニア・シャムラードの日常 52
「神前の奴……やっぱりカウラが好きなのかな」
「嫌いじゃないんじゃないの?」
シャムですら予想された範疇の質問に思わず苦笑いを浮かべた要は静かにまた弾をマガジンに込める。もうすでに限界に近いらしく弾はサイボーグの力をもってしてもなかなかマガジンに収まらない。それに業を煮やして要は軽くマガジンを叩いた。
「暴発するじゃないの」
驚いて話しかけてくるシャムの顔を見上げてにやりと笑うと、要は再び神妙な表情を浮かべた。
「アタシはさあ……別に神前が気になるわけじゃないんだけど……さあ……」
「十分気にしているように見えるけど?」
シャムの突っ込みに弾を込め終えたマガジンをテーブルに叩きつけてにらみつける要。その非正規部隊での市街地戦闘での無差別射撃で裏社会では知られていた女傑にしては迫力に欠けるたれ目がシャムを見つめていた。
「別にいいじゃない。要ちゃんが好きなら……」
「好きとは言ってねえだろ!好きとは!」
「じゃあ嫌いなの?」
「それは……」
心の中を見透かされたようなシャムの視線に思わずうつむく要。
「好きならすることがあるでしょ?カウラちゃんは誠ちゃんのこと嫌いじゃないみたいだし……」
「やっぱりそうか?そうなのか?」
突然立ち上がって詰め寄る要にシャムは思わずのけぞった。
「そんなに急に立ち上がらないでよ……」
シャムが驚いたような顔を浮かべる様を見て、要は自分が明らかに動揺していたことをシャムに悟られたことを公開するように再び中腰で並んでいる空のマガジンに手を伸ばした。
「誠ちゃんはあまりそういうことには縁が無かったみたいだしね……まあ行動半径も普通の女の子が行くところはまず無いし、要領は悪いし、口下手だし……」
「まあそうだな。あいつと行動半径が一致するのはアイシャぐらいの……ってアイツの話をするとどっかから沸いて出る……」
シャムを見上げながら中腰でマガジンを握り締めていた要がそこまで言ったところでその言葉は突然中断することになった。