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ナンバルゲニア・シャムラードの日常 48

「じゃあ行くね!」 


 そう叫んだシャムにようやくキムは目を向けた。いつもの鋭い視線がシャムを思わずのけぞらせる。


「西園寺大尉に伝えといてくださいよ。スライドの予備はあと三つですから」 


「う……うん」 


 自分の言いたいことを言うとそのまま目の前の机で作業を再開するキム。シャムはどうにも沈鬱な部屋の空気に押されるようにして部屋を出た。


 廊下はハンガーの反対側の正門の方、部隊を運用する重巡洋艦クラスの運行艦『高雄』の運行管理を担当する運後部の女性士官達の話し声で華やかに感じられてようやくシャムは気分を変えてそのままハンガーと向かった。


「05(まるごう)式……どうなのかな?」 


 視界が開けて巨人の神殿とでも言うべき景色が広がっている中でシャムは目の前に並ぶ保安隊制式アサルト・モジュール『05式』シリーズが並ぶ様を静かに眺めていた。


 まず手前からシャムの駆る『05式乙型23番機』。シャムのパーソナルカラーである艶のある白い色の装甲板を新入隊員が必死に布で磨き上げている。その肩に描かれたシャム自身がデザインした漫画チックな熊が短刀を持って笑っているエンブレム。先日の誠が定期購読している模型雑誌で早速そのデカールが発売されたということで自慢して回ったことが思い出されて自然と笑みがこぼれてきた。


 隣の脚部が無く、代わりにスラスターと腰の巨大な反重力パルスエンジンが目立つ『05式丙型3番機』。電子戦に特化した腰から上にいくつものアンテナを伸ばしたその機体はシャムの相棒である吉田俊平少佐の機体だった。サイボーグでいつも脳内で再生される音楽を聴いていて外界に無関心な吉田の機体らしく東和空軍の一般機のカラーであるライトグレーの機体にはあちこちに小さく吉田の友人のアーティストのサインが入れられているのを知っているのは部隊でも限られた人物だけだった。シャムは今ひとつ吉田のセンスが理解できずそのまま視線を隣の派手な真紅の機体へと視線を向けていた。


『07式試作6号機』


 部隊が駐在する菱川重工豊川工場謹製の『05式』シリーズの後継機として開発されながら『05式』自体が東和軍制式アサルト・モジュール選定トライアルで不合格となったため量産化の行われなくなった幻の機体、『07式』。


 全体的に主出力エンジンの菱川三型反重力エンジンの出力ぎりぎりに設定された余裕の無い設計である『05式』に対して菱川三型を採用することを前提として設計された高品位の機体は東和陸軍の演習場でも圧倒的な強さを見せて軍上層部や軍事マニアの目を驚かせることになった機体だった。


 そしてその機体のパイロットこそ、保安隊実働部隊隊長クバルカ・ラン中佐その人だった。



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