ナンバルゲニア・シャムラードの日常 43
「聞かないの?」
シャムの言葉に声をかけられた要の顔が思い切りゆがんだ。
「何が言いてえんだ?」
「言わなくてもわかるじゃないの……」
含み笑いが自然とシャムの口元に浮かぶ。要はそれが顔には出さないものの誠を心配している自分の心を見透かしているようで気に入らずにそのまま立ち上がった。
「西園寺さん……」
「タバコだよ!」
誠の言葉にさらにいらだったように立ち去る要。
「素直になればいいのに……」
「ナンバルゲニア中尉、結構意地悪ですね」
ニヤニヤ笑いながら端末のキーボードを叩き続けるアン。小さい頭をモニターから覗かせて様子を見守っていたランもかすかに笑みを浮かべると自分の作業を再開した。
「でも……西園寺さん……何かあったんですか?」
「相変わらず鈍いねえ……まあお前さんらしいがな」
そう言いながら目をつぶる吉田。その目の前では目にも止まらぬスピードで画面がスクロールされ何がしかのシミュレーションデータがくみ上げられていっていた。
「あ、僕やっぱり話してきます」
「神前!子供じゃねえんだ。テメエの検査のデータの提出。後三十分でなんとかしろ」
非常に叫ぶラン。心配そうに要の出て行った扉を目にしながら誠は腰をすえると起動した端末の画面に厚生局のデータルームにつながるシステムを起動させる。
「そうだよ、お仕事お仕事」
シャムはそう言うといっこうに進まない自分の経理伝票の入力を再開した。