ナンバルゲニア・シャムラードの日常 41
「じゃあ手伝ってよ」
「やなこった」
ふんぞり返った吉田はそのまま目を部屋の入り口に向けた。そこには部隊の小火器を管理する部門の責任者であるキム・ジュンヒ少尉が仏頂面で突っ立っていた。
「おい、キム。何の用だ?」
ランのめんどくさそうな声に苦笑いを浮かべたキムはそのまま頭を掻きながら部屋に入ってきた。
「昼飯の注文……僕が当番なもので」
「ああ、そんな時間か」
「さっきアタシが言ったじゃねえか」
「西園寺、うるせーよ」
ランはそう言うとキムの手からメニューを受け取る。
「あそこ……また値上がりかよ」
「天津丼ですか……卵は最近上がっていますから」
キムはぶつぶつ呟く小さなランに相変わらずの苦笑いを浮かべ続けながら見下ろしていた。
「そういえば何菌だったっけ?千川の農場で大発生した奴」
「コンロンなんとかモネラ……サルモネラか」
「西園寺。いちいち外部記憶に頼るんじゃねえよ」
シャムと要の間抜けなやり取りに苦虫を噛み潰したような顔をしたランはそのままメニューを閉じた。
「卵は止めだ。酢豚定食で行くわ」
「えー!あそこの酢豚にはパイナップル入っているじゃん」
叫ぶシャムを一にらみした後そのままメニューを返したランは仕事に復帰した。キムは黙ってそのままメニューをシャムのところに持ってくる。
「たまにはパスタとか食べたいよね」
「全部菱川の工場の社員食堂に出入り禁止になった原因を作った隊長に言え」
吉田はそう言うと覗き込んでいたメニューの坦々麺を指差すとキムの顔を見てにやりと笑った。