ナンバルゲニア・シャムラードの日常 38
「やっぱり俺を解剖じゃないですか!」
島田が叫ぶが誰一人として要の軽口を止めるものはいない。
「だって……」
「なあ」
岡部もフェデロも島田が解剖されるのは当然と言うような顔で島田を見つめている。
「死なないんだろ?貴官は」
ロナルドの言葉が島田に止めを刺す。うつむいてうなづく島田。確かに彼は本当に不死身だった。
不老不死。そういう存在も先住民族『リャオ』には存在した。島田はその血が現れた珍しい能力を保持していた。意識がはっきりしている間の彼の再生能力は異常だった。先日の同盟厚生局の暴走の際に出動した際も腹部に数十発の弾丸を受けて内臓を細切れにされても翌日には平気で歩き回っていたほどの再生能力。それはかつて嵯峨がアメリカ陸軍の研究施設で完全に臓器ごとに解剖されてから再生されたと言う事実に匹敵するインパクトを部隊の隊員達に与えた。
「確かにそうですけど……痛いんですよ、あれは結構」
「痛いですむのか?それなら一度こいつを三枚に下して……」
「俺はマグロか何かですか!」
叫んだ島田に部屋中のにやけた視線が集まる。
「まあ安心しろよ。再生すると分かっていてもお前の頭に風穴を開けたら殺人未遂でアタシ等が刑務所行きだ。誰もそんなことはしねえだろう……多分」
「西園寺さん!多分が余計ですよ!」
島田が叫ぶのを見ながらシャムは自分の端末のスロットに島田から受け取ったディスクを差し込む。
「じゃあアタシも勉強するから」
「期待してませんがね。がんばってくださいよ」
シャムの言葉に吐き捨てるようにそう言うと島田は出て行った。
「アイツ……冗談くらい分かればいいのに」
「島田にしか通用しない冗談だな。それにさっきの大尉の言葉どおり貴官が銃を島田に向けた時点で殺人未遂で懲戒免職だ」
「それは大変だねえ。クワバラクワバラ」
ロナルドの言葉に首をすくめながら再び要は作っていた書類の作成の業務に立ち戻った。




