ナンバルゲニア・シャムラードの日常 37
「解剖か……」
「俺がですか?」
突然の声に驚いて振り返る要。そこにはつなぎを着た技術部整備班班長の島田正人准尉が立っていた。
「ちゃんとノックぐらいしろ!」
「しました。気づいてないのは西園寺さんくらいですよ」
「アタシも気が付かなかったよ!」
「ナンバルゲニア中尉は……まあいいです」
そう言うと島田はディスクを一枚シャムの前に差し出した。
「何?これ」
シャムの言葉に大きく肩を落とす島田。そして要に目をやる。要は自分が話しの相手で無いと分かるとそそくさと自分の席に戻って書類の作成を開始していた。
「先週の対消滅エンジンの位相空間転移実験の修正結果です」
「エンジン?あの時はちゃんと回ったじゃん」
抗議するような調子のシャムに大きくため息をついた後、島田は頭を掻いてどう説明するか考え直しているように見えた。
「無駄無駄。どうせシャムにはわからねえよ」
「要ちゃん酷い!アタシだって……」
「じゃあ対消滅エンジンの起動に必要な条件言ってみろよ」
要にそう言われると黙って何も言えないシャム。フォローしてやるかどうか考えている吉田は黙って動くことも無かった。
「まあぶっちゃけ理屈が分からなくてもきっちり成果はありましたと言うのが結論なんですがね」
島田はそう言うとそのまま立ち去ろうとする。シャムは首を捻りながら相変わらず対消滅エンジンの理論を思い出そうとしていた。
「ああ、解剖なら最適の人材がいたな」
何気ない要の一言にびくりと驚いたようによろける島田。それを見てさらに要はにんまりと笑って立ち上がりそのまま島田の肩を叩いた。