ナンバルゲニア・シャムラードの日常 35
「それじゃあ僕達は出かけます」
「おー。がんばって来いよ」
「お土産待ってるね」
楓が出かけるのをランとシャムが見送る。要は時々自分に熱い視線を投げてくる楓を無視してそのまま黙り込んでいた。
「じゃあ……早速頼むぞ」
そう言うとランは自分には大きすぎる椅子からちょこんと飛び降りる。
「ランちゃんどこ行くの?」
「会議だよ……ったくこう言う事はまじめにやるんだな隊長は……」
頭を掻きながら123cmの小さな体で伸びをしながら部屋を出て行くランを部隊員はそれぞれ見守っていた。
「会議?」
「あれじゃねえか?来月の豊川八幡宮の時代行列の警備とか」
不思議そうなロナルドにすっかりオフモードの要が答えた。だがそれでも理解できないと言うようにロナルドは首をひねる。
「うちね、去年部隊が創設されたときに隊長が自分の家の鎧とか兜とかを着て見せて祭りを盛り上げる約束をしたの」
「そう言う事だ。まあ実際嵯峨家の家宝の具足は今一つ叔父貴の趣味にあわねえとか言って全部叔父貴のポケットマネーで隊のほとんどの鎧兜は新調したんだがな」
要の言葉に瞬時にロナルドの目に輝きがともった。それを見て要はまずいことをしたと言うように目をそらした。
「それは……俺達も鎧兜を?」
「うん!多分みんなの分も作ってくれるよ」
元気に答えるシャム。ロナルドも思いがけない思い出作りができるとすっかり乗り気でシャムに質問を続ける。
「侍の格好か……あれかな、キュードーとかも見れるのかな?」
「キュードー?」
突然英語のような発音で言われて戸惑うシャム。めんどくさそうに要は手元の紙に『弓道』と書いてシャムに手渡した。