ナンバルゲニア・シャムラードの日常 34
「誠ちゃんも気になる。でも自分を愛してくれる楓ちゃんも……」
「腐ってるな、テメエの脳は」
アイシャの言葉に照れながら要は自分の端末に向き直った。
「それよりクラウゼ。良いのか仕事は?……ってよくねーみたいだな」
ランの声を聞きながらその視線をたどってみれば入り口で戻って来いと手招きをするサラとパーラの姿が見えた。
「申し訳ありません!それでは失礼します」
仰々しく敬礼をしたアイシャがサラ達に連れて行かれる姿を見て室内の隊員はどっと疲れが襲ってくるのを感じていた。
「それにしても……今年もやっぱり被害は多いのか?」
めんどくさそうにランがシャムを見つめる。シャムはしばらく考えた後口を開いた。
「今年は特にサツマイモがやられちゃったみたい。特に夏から秋は禁猟期だからその時期を狙って降りて来るんだよね」
「そーなのか?まあいいや。先週の起動実験のレポートまとめてくれりゃー帰って良いぞ」
だんだん投げやりになるランにシャムは頬を膨らませた。
「それってアタシが邪魔ってこと?」
「邪魔だな」
「邪魔としか……」
ランとそれまで黙って様子を伺っていたロナルドが答える。その態度がシャムの怒りに火をつけた。
「じゃあ楓ちゃん。アタシは行かないから」
「え?僕と渡辺だけで行けと言うんですか?」
驚いたように楓が叫ぶ。隣の渡辺も困ったようにシャムを見つめている。
「いいじゃねえか。付き合ってやれよ」
「要ちゃんが行けば良いじゃないの!」
シャムはそう言うと要をにらみつける。めったに文句を言わないシャムが怒っているのを見て吉田がいつでも止めに入れるように椅子に手をかけた。
「じゃあ先月の出張旅費の清算書。間違いが有ったよな」
「中佐、それは俺が直しといたはずですけど……」
「吉田に聞いてるわけじゃねーよ。再提出できるよな?」
ランの言葉にシャムは一気に目を輝かせて自分の端末を開いた。