ナンバルゲニア・シャムラードの日常 3
「16世だよ」
早速白米を口に掻きこんだシャムは味噌汁を一口飲んでそう答える。
「でもなんで……16世なの?」
静香の当たり前の言葉にしばらくシャムの動きが止まる。
「うーん……」
「ああ、名前はどうでもいいから。これ持っていってあげなよ」
信二の言葉にシャムは大きくうなづく。そして再び彼女の視線はテーブルへと向かった。
「シャムちゃん、バイクに乗るの?それ」
「大丈夫だよ。荷台に括り付けるから」
「シャムちゃん。産業道路は大型車が多いから気をつけてね」
心配そうに和美が椅子に座りながらつぶやく。シャムは条件反射のようにうなづきながら箸を進めた。
「それにしても……シャムちゃん小さいよね。本当に36歳なの?」
静香の何気ない一言に場が凍りついた。
「うーん……それはね」
「うん」
元気良く静香がうなづく。シャムはそれを見るとポケットに手を突っ込んだ。
「免許書は何度も見せてもらったよ。そうじゃなくて……」
「じゃあわかんない」
最後の一口を茶碗から口に入れながらシャムがつぶやいた。それを見て安心する佐藤夫婦。
「それじゃあ……お茶入れるね」
シャムはそう言うとすばやく椅子から降りてそのまま慣れた調子で茶箪笥に手を伸ばした。まったく普通に茶筒を出して流しにおいてある急須と湯飲みに手を伸ばして要領よく並べていく。
「本当にシャムちゃんは偉いわね……下宿代貰っているのにこんな手伝いまでしてくれて」
「お母さん、大人にそれは失礼よ」
感心する母にため息をつきながら静香は立ち働くシャムの背中を眺めていた。