ナンバルゲニア・シャムラードの日常 21
「アイシャ……テメエ……」
つぶされかけていた要だが軍用義体であるその体はのしかかる熊の圧力を押し戻そうとしていた。その姿に驚く菱川重工業の女子従業員達。
「ほら、平気じゃないの」
「平気に見えるか?これが平気に見えるのか……テメエは」
ようやく冗談を済ませたグレゴリウスは飛び上がってシャムの後ろに隠れる。その目をにらみつける要。なんとも不思議な光景が展開していてただ呆然と見守るギャラリー達。
「それより……シャムちゃん。リアナお姉さんは?」
「ああ、さっき来てたよ……そう言えば艦長代理になるんだよね、アイシャは」
「まあね」
「心配もここに極まれりだな」
「何か言った?」
「別に」
三人の女性隊員のやり取りを見て工場の職員達は噴出すタイミングを図っていた。
「それじゃあアタシ先行ってるわ」
そう言うと要は近くに止めてあったバイクに足を向ける。
「あれ?今日はカウラは?」
シャムは思わず要の第二小隊の小隊長、カウラ・ベルガー大尉の名前を挙げた。いつもはカウラのスポーツカーにアイシャと要、そして第二小隊の新人神前誠曹長を乗せて通ってきているのでバイクで通勤する要達を見るのは久しぶりだった。
「ああ、あいつは今日は有給。それと……」
「誠ちゃんは今日は本局で検査だって。法術適正の再チェック」
「んなことしなくても奴は結構いい活躍してるじゃないか……」
そうつぶやいた要をにんまりと笑っているアイシャが見つめていた。