ナンバルゲニア・シャムラードの日常 20
信号が変わるとグレゴリウスはシャムを乗せたまま悠然と歩く。トレーラーの運転手は驚いた様子でその巨大な熊に少女が乗って移動しているさまを見守っている。
「ほら、人気者」
「わう」
誇らしげにシャムとグレゴリウスの行進は続く。そしてそのまま飛行機の胴体部分を製造している建物の脇を抜け、まるでショッピングセンターのような看板を掲げた工場の生協の前に着いた。
「あ!熊さん!」
入り口で立ち話をしていた女性職員がシャム達を指差す。それを見て周りの女性事務員達もシャムに目を向けてきた。
「本当に……話に聞いたとおり女の子が飼っているのね……」
「でも大丈夫なの?」
興味深げに見る者、いつでも逃げられるように引き下がる者。さまざまな視線にシャムは鼻高々でそのままグレゴリウスから飛び降りた。
「馬鹿!」
突然シャムがはたかれる。そこには保安隊実働部隊第二小隊所属の西園寺要大尉の姿があった。
「要ちゃん……痛いじゃない」
「当たり前だ。痛くしたんだから……うわ!」
要の言葉が終わる前にグレゴリウスは大好きなシャムを虐めたことに復讐するために要にボディープレスを食らわした。
「くそ!どけ!馬鹿熊!」
もがく要。それを見て満足げにうなづくシャムの隣に先ほど熊を見て黄色い声を上げていた女性事務員の一人が恐る恐る声をかける。
「大丈夫なんですか?」
「平気平気!」
「そう平気よねえ、要ちゃん」
女性事務員の間を縫って長身の紺色の髪の女性がシャムに声をかけた。その整った肌と自然界ではありえないような鮮やかな紺色に女性事務員達は不思議そうにその人物、アイシャ・クラウゼ少佐の方に顔を向けた。