ナンバルゲニア・シャムラードの日常 19
「それじゃあ行こう!」
そう言うとシャムは軽くグレゴリウスの首筋を叩いた。うれしそうに目を細めるとそのままグレゴリウスは歩き始める。
「中尉……」
警備部員が一人、申し訳ないという表情で声をかける。
「大丈夫だって!グレゴリウスは人気者だからね」
「でも……そんなでかぶつ。上に乗られただけで怪我人が出ますよ」
「だから早朝にやってるの!それに外には出ないから」
そう答えるシャム。だがスキンヘッドの警備部員は外から巨大なグレゴリウスを見てスピードを落とす菱川重工の職員の方に目をやった。
「本当に……もうそろそろ外出禁止をしますから……」
「ごめんね」
謝るシャムだが心配そうな目でグレゴリウスに見つめられると少しばかり気が引けてそのままゲートをくぐった。
部隊の外には広がるのは地球系以外では最大規模の機械工場。目の前の道には巨大なトレーラーが鉄の柱を満載して加速を始めている。
「これに比べたら……グレゴリウスなんてねえ」
シャムはそのまま歩道を進むグレゴリウスの頭を撫でながら進んでいた。時々通る乗用車。何割かは保安隊隊員の車らしく運転しながら敬礼する姿がシャムの視線からも見えた。
「どこまで行こうか……」
軽く敬礼を返しながらグレゴリウスの耳元まで身を乗り出してたずねる。
「わう!」
「わかったよ。おやつね」
そう言うとシャムはそのまま工場の構内の車道を横切る押しボタン式信号の前でグレゴリウスから降りるとそのままボタンを押した。