ナンバルゲニア・シャムラードの日常 15
「とりあえず今年もジャガイモは作るの?」
「うん、作るよ。去年開墾したところがまだ土ができていないから」
そう言うとシャムはしゃがんで必死に雑草を探している隊員達の間に割り込んだ。
「野菜と雑草。教えたよね……ってそこ!」
シャムが指差した先では白菜を刈り取ろうとしているスキンヘッドの大男の姿があった。
「すみません!わからないもので……」
「それは白菜!雑草は……」
そう言うとシャムはしゃがんで見せる。そしてすぐに小さな葉っぱを見つけて引き抜いた。
「これくらいの草だよ。あんまり大きいのは大体野菜だから」
シャムの言葉にうなづきながらマリアが腰を下ろして畑の畝を左右見ながら進んでいる。その光景に彼女の部下達は少し驚いたような表情を浮かべていた。
「ごめんね、マリア。なんだかつき合わせちゃって」
「いいのよ。うちもかなり野菜はもらっているから。少しは貢献しないと」
そう言いながらマリアは鎌で器用に芽が出たばかりの雑草を刈っていく。
「ああ、持てなくなったらこれに入れてね」
シャムがビニールのゴミ袋を広げる。それを見ると隊員達は次々に手にした小さな冬の草を袋に放り込んだ。
早朝の冷たい冬の日差しが畑を明るく照らし始めた。腰を曲げているのに疲れた眼鏡の隊員の影が長く西へと伸びていた。
「それにしても……今年は暖かいんだな」
「そう?……やっぱりそうね。霜もまだ降りたの何回かしかないもんね」
マリアの言葉にうなづきながらもシャムの手は器用に雑草をむしりとっている。
「霜が降りたら大丈夫なのか?」
「霜が降りるとねぎがおいしくなるよ。甘くて……鍋に入れると最高」
「それじゃあ隊長が気にしているはずだ」
マリアの苦笑いに思わずシャムはグラウンドの向こうのハンガーに目をやった。その入り口で大柄の男がタバコを吸いながらこちらを眺めている姿が目に入る。
「本当に鍋が好きなんだね。隊長」
嵯峨の姿を確認するとシャムは満足げに頷いた。