ナンバルゲニア・シャムラードの日常 144
しばらく黙って下を向いている吉田に静かに近づいていくシャム。
「くだらないことなら止めておけ」
急に目を開いた吉田の一言にシャムは驚いたような顔をする。
「進歩がないな……行くぞ」
そう言うと吉田は立ち上がった。ビールは二瓶は飲んでいるが、すでにアルコールは完全に彼の体から抜けているのはいつものことだった。
「カウラちゃん。運転はだめだよ」
「ああ、代行を頼むが……」
シャムとカウラは自然と倒れた誠達に目を遣る。いつもなら全裸の誠にいたずら書きをする要だが、今日はランと明石がいるので珍しく殊勝にパンツを履かせていた。
「久しぶりに見るとおもろいな」
「人ごとだと思いやがって」
混乱を楽しむ明石を苦々しげな視線で見上げるラン。シャムは大きくため息をつくとそのまま階段を下りるラン達に続いていった。
「お愛想!」
明石はそう言いながらそのまま出てきた春子とともにレジに向かう。シャムは何となく疲れたような感じがして誰もいない一階を黙って通り抜けて外に出た。
空は晴れ上がっていた。北風が強く吹き抜ける中、雲一つ無い空には大麗の姿が見て取れる。
「ああ今日も晴れか……明日も晴れそうだな」
出てきた吉田が声をかける。シャムは静かに頷く。
「明日もいい天気だといいね」
「まあな。雪でも降られたら面倒なだけだ」
吉田はそう言うとそのまま歩き出す。
「おう、車を出してくるから。明石にはよろしく言っといてくれ」
「勝手なんだから!」
シャムは手を振る吉田を見送りながら叫ぶ。街の深夜の明かり。いつものことながら人通りは絶えることがない。
「吉田はまた勝手に行っちまったのか?」
引き戸を開けて出てきたランが顔を顰める。シャムは頭を掻きながらランが開けた店の中を覗き込んだ。
寝ぼけているように突っ立っているアイシャ。不格好に無理矢理服を着せたのがすぐに分かる姿の誠を背負う要の姿がいつものことながら滑稽に見えた。