ナンバルゲニア・シャムラードの日常 140
しんみりとした雰囲気。マリアは気にする様子もないが、明らかに背後で小夏がシャムを心配そうにのぞき見ていた。
「カウラちゃんなら大丈夫だよ」
シャムの言葉に気分が変わったようでマリアが笑みを浮かべながら頷く。
「そうだ、つまらない話を聞いてもらった例だ。上に届けてくれないかな……そうだ、茶漬けが欲しい時間帯だろ?」
気を利かせたようなマリアの声にシャムは指を折り始める。
もう誠とアイシャはダウンだろう。要は締めの茶漬けは手を出さない主義だった。そうなるとラン、明石、岡部は確実に茶漬けを頼む。カウラはそもそも酒を飲んでいない。別れ話を相談しているだろうパーラやそれを聞いているサラも茶漬けには手を出さないだるう。
「じゃあ3人前かな」
シャムの言葉に小夏は笑顔で厨房に入って行った。見送るマリアの暖かい視線。
「お前の分はどうなんだ?」
「アタシと俊平はいいよ。あまり気にしない質だから」
「そうか。なら私達もお愛想にするかな」
早速立ち上がるマリアに続いて部下達も立ち上がる。ちょうど二階からほろ酔い加減の春子が下りてきたところだlった。
「あら、マリアさん。今日はおしまいなの?」
「ああ、また寄せてもらうつもりだ」
ほとんど同じ年の二人。どちらも東和の常識と離れた世界を生きてきただけあって気が合うところがある。財布を取り出すマリアを見ながらそのまま春子は小走りで戸口にあるレジに向かう。
「師匠、できました」
小夏がカウンター越しにお茶漬けを差し出してきた。シャムはそれを盆にのせるとそのまま階段を駆け上った。
入り口には座布団を枕代わりにして眠りにつくアイシャとその隣に放置されている全裸の誠の姿があった。
「要ちゃん、またやったの?」
シャムの視線は静かにエイひれをかみしめている要に向いた。
「まあ、こいつ弱いから」
「要ちゃんが強すぎるんだよ」
シャムはそう言いながら上座のラン達のところまで茶漬けを届けることにした。