ナンバルゲニア・シャムラードの日常 14
「総員注目!」
グラウンドに出るとマリアは声を張り上げた。中央でぐったりとしていた隊員達が驚いたように立ち上がる。
「急げ!」
マリアの二言目にはじかれたようにして彼等はマリアの周りに集まった。
「今日はご苦労だった。だが我々はこの基地の警備と管理を担当している。そこで……」
そう言うとマリアは隣の明らかに小さくて親子にも見えそうなシャムに視線を落とした。
「あのね、みんなにお仕事を頼みたいの」
シャムの言葉に隊員達は全員不思議そうにシャムの持っているゴミ袋に目をやった。
「予想はついていると思うが畑の草むしりだ。貴様等の先輩達もきっちりこなしてきた仕事だ。バックネットの裏から全部、始業時間までにすべての雑草をむしれ」
そう言うと笑みを浮かべるマリアだが、これまでの厳しい訓練から隊員達は緊張した面持ちでシャムに目をやった。
「お願い」
子供にしか見えないシャムにそう言われては断るわけにもいかない。そんな感じで警備部の新人達はそれぞれ畑に向けて走り出した。
空は夜明けを迎えていた。
「今日もいい日になるといいね」
「そうだな」
シャムとマリアは空を見上げる。その背後ではハンガーの作業の立てる金属音が響いていた。
「それじゃあ行くよ、マリア」
歩き出したシャムに続いてマリアも歩き始めた。グラウンドを抜けると黒い色の土が見えた。丸くなっている白菜。半分以上収穫しつくされた春菊が目に飛び込んでくる。
「野菜の趣味は隊長のものなんだよな」
「土を作るので精一杯だったからみんなの要望にはこたえられなくて……マリアは何がほしい?」
微笑むシャムを見ながらマリアは苦笑いを浮かべていた。