ナンバルゲニア・シャムラードの日常 131
「みごとに焦げたな……」
「ならひっくり返してくれればいいのに」
「なんで?」
とぼけた顔でたこ焼きを食らう吉田。シャムはむっとした表情で仕方なく削り節をかける。
「あら、焦げちゃったわね」
「ひどいんだよ!俊平はずっと見てたのに何もしてくれないの!」
シャムの訴えに春子は鋭い視線を吉田に向ける。すごみのある女性の視線に吉田もさすがに気まずく感じてビールをのどに流し込んでごまかそうとする。
「でも本当においしいから。食べてみてよ」
春子は特製のソースをかけてやり、さらに青のりを散らす。
独特の香りにシャムの怒りも少しだけ和らいだ。
「じゃあ食べてみるね」
シャムはそう言うと一切れ口に運んでみた。柔らかい生地の中に確かな歯ごたえのエビが感じられる。
「これいい!」
「でしょ?」
気に入ったというようにシャムはそのまま次々と切っては口に運ぶことを続けていた。
「慌てて食うとのどにつかえるぞ」
吉田に言われてビールを流し込む。それでも勢いが止まらない。
「よく食うな……」
ふらりと立ち寄った感じの要が手にしたテキーラをシャムのビールの入ったグラスに注ごうとするのを軽く腕で阻止する。
「なんだよ、ばれたか」
そのまま要は自分の鉄板に戻っていった。
周りでも次第に焼け上がっているようで鉄板を叩くコテの音が響く。
「なんだか飯を食ってる感じがするな」
「幸せな瞬間でしょ?」
「そうか?」
マイペースで一人たこ焼きを突く吉田。その吉田のテーブルに誠がビールを運んでくる。
「気がつくね」
吉田は空になった瓶を誠に渡すとグラスになみなみとビールを注いだ。