ナンバルゲニア・シャムラードの日常 13
「鎌と……袋……ゴミ袋」
シャムは早速準備を始める。マリアはそのシャムのうれしそうな様子を不思議そうに眺めていた。
「シャム、お前本当に農業に向いているな」
「そう?でも畑仕事は大好きだし……牛の世話とかも……」
うれしそうにそう言うと鎌を二本マリアに手渡した。
「私も手伝うのか?」
「お願い!意外と最近忙しくて手入れしていないのよ」
「そう言うものか?」
なんとなく釈然としないマリアを置いてシャムは倉庫の鍵をかけた。
「じゃあ行こ!」
元気よくシャムが歩き出すのにあきれながらマリアも後をつけた。廊下を進むと目の前にはハンガーが見えた。そこには早朝だというのに人の影と機械の作動音が満ちている。
「ああ、シャムにマリア。お疲れ様」
ハンガーに並ぶ巨大人型兵器『アサルト・モジュール』で部隊で採用している05式の手前で部下から説明を受けていた技術部部長許明華大佐がぼんやりと歩いていたシャム達を見つけた。
「へえーエンジン交換するんだ」
シャムもパイロットである。自分の愛機である05式乙型の輪郭とそのエンジン部分に説明書きが集中しているところから直感でそう尋ねた。
「まあね、シャムのクロームナイトの稼働データで結構05式のエンジン出力に余裕があるのがわかったから。うちは大体が数的には劣勢状態で実戦になることが多いんだから。少しはましな機体を用意しないとね」
そう言いながら明華は苦笑いを浮かべた。その表情がこれ以上仕事の邪魔をするなということだと悟ったマリアがシャムの肩をたたく。
「じゃあがんばってね」
「一応がんばっておくわ」
シャムは明華に手を振るとそのままゴミ袋を片手にハンガーを通り抜けた。