ナンバルゲニア・シャムラードの日常 128
シャムもビールを飲み干しながら考えていた。笑顔でランとなにやら歓談している明石。
今なら誠の立ち直りのきっかけについて話が聞けるのではないか。そう思ってシャムが腰を上げようとしたときだった。
「はい、新エビ玉三倍!」
どんとシャムの前にどんぶりが置かれた。上を見上げれば仏頂面の菰田が仁王立ちしている。
「俺のは?」
「はい」
これもまた投げやりに吉田の分を差し出す菰田。その態度にさすがの吉田も冷笑を浮かべている。
「菰田君。もう少し愛想良くしないと」
「そうだ!この変態!」
春子のたしなめる言葉と要の罵声。予想はしていたようで平気な風の菰田だが、少しばかり表情を曇らせているカウラを見るとさすがにまずかったというようにうつむいてみせる。
「まあいいや。じゃあお駄賃でアタシの分のテキーラやるから取って来いよ」
「いらないですよ!」
要の叫びにそう返事すると足早に階段を下りていく。
「あいつも……管理部門なんだからもう少し愛想良くすりゃあいいのに」
「人それぞれよ。ね、明石さん」
「はあ」
急に春子に話題を振られた明石がどうにも困った顔で頭を掻いていた。
シャムは今だと思ったが目の前の未知の味への誘いを断るほど理性が強い彼女ではない。自然と手はどんぶりの中のお好み焼きの具に伸びていた。
「へえ、結構大きなエビなんですね」
「そうなの。そのままだと大きすぎるから切ってみたんだけど……歯ごたえを考えるとその大きさが微妙でね。いろいろ試してこうなったのよ」
吉田の言葉に得意げに答える春子。そんな明るい雰囲気に気が紛れてきたのか、それまでこわばっていたパーラの表情が少し緩むのがシャムにも見えた。
「あんまりかき混ぜないでね。このエビは歯ごたえが大事なんだから」
春子の言葉に頷くとシャムは静かに鉄板の上に生地を広げた。
小麦粉の焼ける香ばしい香りが広がる。それはシャム達の鉄板だけではない。明石のところも軽快に油がはねる音が響いている。
「おう、懐かしいなあ。これを待っとったんや」
明石の銅鑼声が部屋中に響く。隊員達もそれぞれに自分の具を焼き始めていた。