ナンバルゲニア・シャムラードの日常 126
さっそくメモを手に走り回る小夏。
「豚玉!」
「じゃあ僕もエビでいいかな」
「イカで頼む」
要や誠、カウラの注文が続く。
三杯目のビールを飲んだパーラが静かに視線を鉄板に落とした。
「とりあえず何も言わないで」
諭すような調子の春子。それを見ながら安心したように明石は突出しのひじきを突いている。
「女将さん、分かるの?」
シャムはつい気になって尋ねてみた。春子は首を振る。だがそれでもそんな春子に安心しているようにハーラは黙って春子を眺めていた。
「神前!女将さんの燗酒運んで来いや!」
気を利かせた明石の一言にはじかれるように誠が階段を駆け下りていく。
「ごめんね、明石君」
「ええんです。ワシ等もいつもお世話になってばかりやさかい」
そう言うと明石は手元のビールを手に取りランの前に差し出した。
「おう、気が利くじゃねーか」
ランはさっとグラスを差し出す。なみなみとビールが注がれる。そして明石は今度は隣の岡部に瓶を向けた。
「これからもよろしゅうたのむで」
「は、はあ」
サングラスの奥でまなじりを下げているだろう明石を想像しながらグラスを差し出す岡部。それを見ていたシャムの目の前にビールの瓶が現われた。
「シャムも飲めよ」
吉田がビールを差し出している。シャムは慌ててグラスを差し出す。
「まあエビがどんなのか……楽しみにするか……俺はお好み焼きはいいや。たこ焼きをお願い」
隣まで来ていた小夏にそう言うと手酌で自分のグラスにビールを注ぐ吉田。
すでに明石も飲み始めている。あちこちでグラスをあおる顔がシャムからも見えた。
「私も飲むね」
「勝手にしろ」
隣で黙って酒を飲んでいる吉田に笑みを漏らしながらシャムはビールをのどに注ぎ込んだ。