ナンバルゲニア・シャムラードの日常 123
そんままランは階段を駆け上っていく。
『馬鹿野郎!』
『嫌だな、中佐。ただの冗談じゃないですか……』
『人騒がせな冗談だな』
二階のやりとりを聞きながらシャムと明石は苦笑いで階段を上る。上座にどっかりと座っているラン。その隣で手に靴を持った吉田が愛想笑いを浮かべていた。
「ああ、靴置いてくるから」
それだけ言うと吉田は照れたような笑みを浮かべながら階段を駆け下りていく。
『なんだよ、ロボ。また二階からのご登場か?』
要の快活な声がランの隣の鉄板を占領したシャムの耳まで聞こえてきた。
「あ、誠ちゃん達着いたんだ」
「もうええ時間やさかいな。当然なんとちゃうか?」
明石はそう言いながらランの座っている鉄板の横にちょこんと座る。巨体が売り物の明石の隣にどう見ても小学生のラン。しかも同じ中佐の階級だがランが先任と言うことで常に明石がランのご機嫌を伺うことになる。
いつもの光景ながらシャムはその滑稽な有様を見ると吹き出してしまいそうになった。
「おう、もう来てるな!」
ずかずかと大きな態度で現れた要。それをなんとか制するように頭を下げながらシャムの隣の鉄板に導く誠。カウラはいつものように黙って誠の正面に座る。
「あれ?アイシャは?」
「あのアホか?なんでもサラと話があって遅れて来るってさ。どうせパーラの件だろ?」
まるで心配することは無いというように要は頼むものが決まっているくせに鉄板の脇に置かれてあったメニューを開いて見始めた。
「鎗田も観念したんとちゃうか?」
「それ鎗田の都合だろ?パーラの奴にも都合があるんじゃねーのか?」
ランは小さな体に似合いの小さなスタジャンを脱ぎながらネクタイを弄る明石を上目遣いに見つめた。それにあわせるように女将の家村春子と娘の小夏がそれぞれに突出しとおしぼりを持って現われる。
「本当に明石さんはご無沙汰ね」
「いやまあ、済みません……どうにも本局勤めは柄にないとは思うとるんですが……なかなか」
「少しは明華さんのところに顔を出してあげなさいよ」
婚約者の名前を出されてただひたすらに頭を掻く明石。それを色気のある切れ長の目で一瞥すると春子は小夏と一緒に突出しやおしぼり、そして小皿を配り始めた。