ナンバルゲニア・シャムラードの日常 119
突然のパーラへの電話。それは鎗田が未成年との交際が発覚して警察署に連行されたと言う内容のものだった。パーラは彼女より激高している鎗田の上司である許明華をつれて新港へ向かった。
そこで何があったのかはシャムも知らない。実際平然とシャワーで髪を流している情報通を自称するアイシャも詳しくは知らないとシャムも思っている。ともかく鎗田は釈放されて特にニュースにもならなかったところからみてもみ消したのか、それとも単なる誤解だったのか。ただそれ以来パーラは鎗田の話題を持ち出すことを避けるようになっていた。
「でも本当にいいの?」
バスタオルで体を拭きながらのシャムの言葉。アイシャは聞こえていないというようにじっと頭からシャワーを浴びている。
「本人の問題だ。私達が干渉するようなことは何もない」
「いいこと言うわね、カウラちゃん。胸が平らなわりに」
「最後の言葉は余計だ」
アイシャがいつもの軽い口調に戻ったのをみて事態はそれほど深刻ではない。そうシャムは思った。
「それに……今回はお姉さんも電話で釘を刺してたみたいだから」
少しくらい調子でアイシャがつぶやく。だがシャムはお姉さんことリアナが穏やかな調子で鎗田を諭すのを想像して少しばかり安心していた。
「それじゃあ大丈夫だね」
下着を着けてズボンに足を通す。シャムより少し遅れてサラもシャワーを出た。
『おい!早くしろ!』
シャワー室の外では要の叫び声が聞こえる。
「自分は突っ立ってただけだって言うのに……気楽なものね」
思わず苦笑いを浮かべるアイシャ。シャムは着替えを終えるとそのままアイシャ達を置いてシャワー室をでた。
「よう」
要の隣に当然のように立っている吉田。シャムは少しばかり不思議に思って頭の先から足の先までじろじろと見つめた。
「なんだよ……」
「覗いてたんじゃないの?」
「何言ってるんだか……どうせお前はバイクだろ?飲むんだったら俺の車に乗っけて行ってやろうかと思ったけど……止めるか?」
痛いところをつく吉田。そもそも酒にあまり興味のない吉田はシャムにとっていい足代わりだった。
「またバイクを乗っけてくれるの」
「まあな。行くぞ」
吉田はそう言うと早足で歩き始める。
「待って!」
シャムはユニフォームの入ったバッグを手に早足で歩く吉田を追いかけた。