ナンバルゲニア・シャムラードの日常 118
「シャム!早すぎ!」
サラが背後で叫ぶ声が響く。シャムはそのまま思い切り走り出す。
一気に暗い正門に飛び込みそのままロッカーに飛び込んで着替えを手に取ると奥のシャワー室に入った。
入ると同時にセンサーで電気がついた。もうすでに終業から二時間以上経っていて人の気配はない。
「寒いなあ」
そう言いながらそのまま手前のシャワーを占領すると服を脱衣かごに放り込む。
「シャム……早すぎるよ」
ようやくたどり着いたサラ。その後ろには涼しい顔のカウラとアイシャが並んでいる。
「そう言えば、パーラが来てなかったね……」
シャワーの水量を調節しているシャムの声にアイシャの顔が引きつる。
「そうだな。昼に私が来たときにはいなかったが……どうしたんだ?」
カウラが服を脱ぎながらそう言うとしばらくアイシャは頭を掻きながら考えていた。
「言う?」
「私は嫌よ」
アイシャに話題を振られてサラが首を振った。
「あれか……鎗田大尉がらみか……」
「え!二人ってまだ別れて無かったの?」
シャンプーの泡だらけになりながら叫ぶシャム。アイシャは静かにユニフォームを脱ぎながら話し始めた。
「別れたのはもうとっくの話なんだけどね。またやり直したいとか言い出したのよ、あいつが」
「それで出かけるとは……本当にパーラもお人好しだな」
カウラはそう言いながらシャワーを浴び始める。
「私もそう言ったのよ。でもパーラはもうそのことは忘れたからちゃんと同僚として挨拶をしてくるって」
「そう言うのは未練が無い人はしないのよね」
アイシャの言葉に相づちを打つサラ。シャワーの音が女子シャワー室内に響いている。
鎗田司郎。保安隊技術部の大尉だが彼の率いる技術部機関部員は運行艦『高雄』の整備点検の為、常に『高雄』が係留してある東都の東200kmと離れた港町、新港に常駐していた。正直、技術部での彼の評価は高いものでは無かった。
部隊設立と同時にパーラと付き合い始めたと言う時点で技術部の面々が面白く思うわけがない。だが、アイシャ達運行部の面々まで敵に回すことになったのはさらにある出来事がきっかけだった。