ナンバルゲニア・シャムラードの日常 103
隊長室にいたのはほんの数分だというのに夕闇はさらに暗くなって廊下の暗さがさらに強調されている。
「あ!ナンバルゲニア中尉!」
偶然と言うものはある。廊下にはアンとすでに制服に着替えたくたびれた様子のフェデロが部屋に入ろうとするところだった。
「なんだ、終わったの?」
「ええ、でもマルケス中尉が……」
「あんだけ汗を掻かされたんだ。シャワーぐらい浴びさせてもらっても罰はあたらねえだろ?」
そう言うと不機嫌そうに詰め所に消える。シャムはあいまいな笑みを浮かべながら困った様子のアンを見つめていた。
「まあ大丈夫だよ。フェデロのわがままだから。気にしなくても」
そう言いながらシャムはアンを連れて詰め所に入った。
周りの射るような視線を浴びながらも鼻歌交じりにそのまま自分の席に戻るフェデロの姿が見える。シャムは呆れたというように自分の席に戻る。すでに吉田は作業を終えたのかシャムの端末から離れて自分の席で再び机の上に足を上げてふんぞり返っている。
「とりあえず組んでは見たけど……検証は明日にしてくれよ。今はそのプログラムが『05式』のフォーマットで走るかどうか検証をかけてる最中だからな」
「そうなんだ」
シャムはそれだけ言うと端末の終了作業に入った。
すでに定時まで5分を切っていた。今日は明石が野球部の練習に来ている。特に込み入った事件も無い以上、ランも定時に上がると誰もが思っていた。
「やべーな。こりゃ」
そう言うときにはアクシデントは起こるものだった。ランのつぶやきに全員が彼女に注目する。
「どうしました、中佐」
カウラの俊敏な反応。最近の練習試合で打ち込まれている誠に変わって次回の春の大会では再びエースナンバーを背負うのではないかという彼女。練習に入りたい気持ちがいつもは仕事熱心な彼女にそういわせたのだと思うと少しシャムの顔に笑みが浮かんでいた。
「いや、アタシ個人の問題だから……おい、定時だぞ」
シャムはランの言葉にランの後ろにぶら下がっている時計を見た。確かにそれは定時を指していた。
「それじゃああがるか」
伸びをしながらロナルドが立ち上がる。それを見てロナルドの正面に座っていた岡部がすばやく書類を片して大きく伸びをした。
「じゃあ着替えますか」
岡部のその一言で誠とカウラが立ち上がる。シャムもまたそれに続く。
「じゃあ練習してきますから」
「がんばれよ!」
岡部の言葉にランが答える。シャムは張り切っている岡部に続いて再び詰め所を後にした。