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ナンバルゲニア・シャムラードの日常 102

「とりあえずまじめだし……一生懸命だし……」 


「いいことだねえ。基本だよ、それは」 


 そう言うと嵯峨は部隊の野球部の練習用ユニフォームの上に東和陸軍の制服に手を加えた保安隊の上着を肩に羽織った。


「で、筋はどうだ?」 


 嵯峨の言葉にシャムは少し躊躇した。その態度を見て嵯峨は納得したようにうなづく。


「まあな。天才は天才を知るか……神前と比べるとどう見ても落ちるって話なんだろ?確かに神前は臆病と言う致命傷があるし、射撃については絶望的な感覚の持ち主だが……本来のアサルト・モジュールは撃ち合いをする道具じゃない。ダンビラ振り回して斬り結ぶのがかつてこの銀河を支配したと言う古代文明とやらが作ったアサルト・モジュールの目的だ。その目的に関しちゃ神前の才能は万に一つの逸材だからな」 


 そう言うと嵯峨は袖机の引き出しに手を伸ばした。そこから取り出したのは一枚の絵だった。


「まあそんな本来のアサルト・モジュールの使い方は良いとして。うちが要請される使い方をマスターするのは多分アンの方が早いだろうからな。アイツにもパーソナルマークをやろうと思って」 


 嵯峨はその絵をシャムの前に差し出した。寝転がった金色の仏像。その上にはシャムの見たことが無い文字が躍っている。


「なんですか?これ」 


 シャムの言葉に嵯峨はしばらく泣きそうな視線でシャムを見上げてくる。


「そんな目で見ないでくださいよ。仏像ですよね。なんで寝てるんですか?」 


「涅槃仏。遼南南都州の南側のネプラット寺院の大涅槃像をモデルにしたんだけどね。あそこは・・・なんどか南都軍閥の連中と折衝でやりあった場所だから記憶に残っててね。確かアンの実家もその近くのはずだぞ」 


「そうなんですか……」 


 シャムは記憶をさかのぼってみる。高校時代。確かに南都近郊にはインドシナからの移民が多く居住しておりシャムが見たことが無いような様式の寺院がたくさんあると授業で習ったことを少しだけ思い出した。見たことの無い寺院ならその『涅槃仏』とか言う仏像があっても不思議ではない。


「でもパーソナルマークは早いと思いますよ。まだ実戦経験も無いんですから」 


「そりゃそうなんだけどさ。この商売ははったり九割だ。素人だと思ったら敵も舐めてかかってくる……そういう時新兵に死なれる辛さは経験あるだろ?」 


 説得力のある嵯峨の言葉。シャムは仕方なくうなづくしかなかった。


「よし、これで明日明華にお伺いを立てれば万事終了っと。ようやくのどのつかえが取れたよ」 


「隊長、もしかしてそのことだけで一日潰したんじゃないですよね……」 


 シャムの言葉に嵯峨はとぼけるような顔をしたまま椅子を回して隊長室から見える夕日に目を向けた。


「それじゃあ戻ります」 


「ああ、ご苦労さん」 


 少しばかり落ち込んだような嵯峨の言葉を聞きながらシャムは隊長室を後にした。




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